インターネットには、手軽に自分のコンテンツを作成して、公開できるというメリットがあります。
しかし、公開したままでは(ほとんどの場合)誰も見てくれず、事実上公開していないに等しいともいえるでしょう。
コンテンツは誰かに見られて初めて意味を成します。顧客育成向けのコンテンツであれば、見込顧客が見てくれない限りコストがかかるだけの施策でしかありません。「コンテンツ制作」は企画、制作、公開、集客まで行って初めて制作完了となるのです。
では、この広大無比なインターネット上でどのようにして見込顧客(ユーザー)と公開コンテンツを結びつければ良いのでしょうか。
最も手っ取り早い方法は、すでに人が集まっているところにコンテンツを配信する方法です。
いわゆる、「プラットフォーム」上にコンテンツを提供することで、プラットフォームにやって来るユーザーと結びつけてもらう方法です。
今このネット社会ではプラットフォーマーは強大な力を持ち、ネット産業の中心を担っています。
このプラットフォーマーに気に入られれば流入(集客数)という恩恵を受けることが出来ますが、一方で、嫌われてしまうとネット社会から閉めだされてしまうこともあり得ます。
そこで、今回はプラットフォーマーとコンテンツプロバイダーの関係をFacebook社のポリシー改定を手掛かりに考えていきたいと思います。
目次
○Facebook社のポリシー改定がネット業界を大きく揺さぶる
1.「いいね」に対するポリシー改定
2.数年で大きく成長したFacebook
3.FacebookのSpam対策
4.Facebookポリシー変更の流れ
○プラットフォームにとってスパムとの戦いが宿命!?
1.人が集まる場所にスパムあり!?
○まとめ
Facebook社のポリシー改定がネット業界を大きく揺さぶる
「いいね」に対するポリシー改定
2014年8月に、Facebook社は「いいね」に対するポリシーを改定しました。
おもな内容としては、インセンティブ等を引き換えにユーザーから「いいね!(Like)」を受けることを禁止したのです。このポリシーは同年の11月5日に施行されました。
ユーザーにとってみれば、よりFacebookが健全なコミュニケーションプラットフォームとして機能するため、歓迎すべき改定なのですが、ネット上ではこのポリシー改定によって大きなダメージを受けた会社も多数ありました。
参考情報:「いいね!」インセンティブ禁止で影響 「Crocosマーケティング」Facebook関連サービス終了
Facebookがたった一つポリシーを変えるだけでも、そのプラットフォームを集客口の主軸としているWebサイトからすれば、死活問題に匹敵するほどの改定になるのです。
そしてこの関係性は今もなお継続していることで、Facebookがユーザー体験を向上させようとすれば、ポリシーは改定され、その影響を受ける企業は増えていくことでしょう。
数年で大きく成長したFacebook
2014年8月の改定で影響を受けた企業は多く、ニュースや株価にまで影響が及ぶほどでした。
日本国内においてもFacebookを重要な集客口として捉えてWebメディアを運営し、収益をあげていた会社が多数あります。
2010年ころから日本でも流行り始めてきたFacebookは、今や日本でも重要な情報インフラとして機能するユーザー数を抱えており、「プラットフォーム」としての圧倒的な存在感と地位を確立しています。
特にスマートフォンの普及とともに一気に広まった感覚があります。
また、グラフで見る「世界最大のSNS」成長の軌跡:フェイスブックの15年(1)のグラフからも分かる通り、年々、その利用者数は増加の一途をたどっています。
過去、mixiがSNSの代名詞だったころ、「実名制のFacebookは流行らない」と言われていました。しかし、現在世界で最も多くのユニークユーザーを抱えているだけでなく、日本国内においても月間アクティブユーザー数が2,800万人を超えるほどに成長しています。
当然、巨大SNSは集客元としても大きな影響力を持つようになり、集客方法のひとつとして数えられるまでにいたっています。
FacebookのSpam対策
Facebook社はニュースフィードスパムに対する制裁を強化することを2014年4月に発表しています。[発表リリース]
これは、ュースフィードに流すコンテンツがユーザーのクリックを不用意に誘発するようなコンテンツの場合、スパムとして認識し、排除するといった内容のものでした。
また、フィードに流す画像はもとよりリンク先ページのコンテンツ内容にも監視を強化し始めたのもこの頃で、性的・暴力・法的違反を誘発する等のコンテンツを掲載しているリンクをフィードで掲載した場合、Facebookページもしくはアカウントを凍結する等の厳しい処置を行うようになりました。
Facebookのスパム対策の目的は、ユーザー体験の最適化であることは言うまでもありません。そしてそれは、上述したようにポリシーの改定という形でアナウンスされてきました。
Facebookにおけるポリシー改定の変遷
Facebookにおけるポリシーの改定とは具体的にはどのようなものだったのでしょうか。
ここでは、ニュースフィードに大きな影響を与えたポリシーの改定、その中でもパブリッシャーにとって密接な関わりのある改定(あるいはアルゴリズムのアップデート)に焦点を当てて紹介していきたいと思います。
「いいね!」インセンティブ禁止 2014年8月
インセンティブでユーザーからの「いいね」を誘発する行為が禁止されるプラットフォームポリシーの改定。
一部の企業が大きな打撃を受け、サービスを中止せざるを得ない事態に陥ったことも。
「Clicbait」クリック狙い系のコンテンツ 2016年8月
過激なことや思わせぶりなこと、あるいはわざと謎めかせることでユーザーを意図的に誤解させ、クリックを誘うようなWebページなどを「Clicbait」といいます。
Facebookはそのようなコンテンツは、内容いかんに関わらず、ニュースフィードにおける表示順位を下げるアルゴリズムのアップデートを行いました。
例
・「毎日ファストフードを食べ続けたらとんでもない結果に……!?」
・「彼女が椅子のクッションを持ち上げると、そこには……まさか……」
低品質リンクの順位を下げる 2017年5月
このアップデートにより、ユーザーにとってほとんど価値のないような薄っぺらい内容のWebページのリンクは、ニュースフィード上での表示順位が下げられるようになりました。
エンゲージメント稼ぎの投稿を排除するアルゴリズム 2017年12月
Facebookは「共感したらシェア」「なるほどと思ったらいいね!」などといった、シェアやいいね!を強要するような投稿を、リーチを増やすためのスパムだと非難。これらの表示ランクを下げると発表。
クリック・エンゲージメント稼ぎばかりしているWebページやドメインによってシェアされた、あるいはリンクされた投稿はニュースフィードの下位に表示されるようなアップデートが行われました。
企業ページよりも個人(友人・家族など)の投稿を優先 2018年1月
企業やブランドのFacebookからの投稿よりも、友人や家族の投稿を優先的に表示すると発表。
ただ、エンゲージメント率の高い投稿は、これまで通り高い表示ランクを維持するとのことで、Facebookはコメントや「いいね!」がつきやすいライブ動画を奨励しています。
ブランドコンテンツポリシーの改定 2018年3月
企業とインフルエンサーの蜜月が終了?
自ら作成に関わっていないコンテンツを投稿する見返りに「何らかの報酬」を得ることを禁止するポリシー改定。
これにより、パブリッシャーから依頼を受け、報酬を受け取る代わりにインフルエンサーがFacebookでコンテンツを投稿、あるいはシェア、拡散やバズにつながりパブリッシャーの集客が増加する……といったビジネスモデルが行えなくなりました。
企業、インフルエンサー双方が互いに利用し合ってきたwinwinの関係が崩れ、一部パブリッシャーは存亡の危機に陥りました。
再犯防止 2019年1月
フェイクニュースやヘイトスピーチ対策として、Facebookページの厳格化を発表。
ポリシーに反する投稿をしたアカウントは、新しくページを作ることができないという制約がありました。しかしこれには抜け道あって、はじめから複数のページを立ち上げておけば、あるひとつのページが削除されても、他のページで同様の投稿が可能でした。実際、このような方法で削除されたページと同じ目的の投稿を、別ページで投稿するユーザーが後を絶たなかったためにFacebookはポリシーを強化することにしました。
その結果、ページを削除されたオーナーの、ほかのページやグループ、イベントなども削除可能になりました。
コンテンツの独自性 2019年5月
ポリシーに独自性、オリジナリティのほとんど存在しないコンテンツを投稿・拡散してはいけないという項目が追加されました。
以上、簡単に変遷の一部をみてきましたが、一般ユーザーが特に気に掛けねばならないポリシー改定、アップデートではありません。むしろUI・UXの向上が目的とされているので、喜ばしいこと言えるでしょう。
一方で、パブリッシャーやコンテンツプロバイダにとっては死活問題になり得ます。Facebookを集客の窓口にし続けることの可否について考え、まだ問題にされていないことでもポリシー次第ではどうなるかわからない、ということを常に考慮していかなければなりません。
プラットフォームにとってスパムとの戦いが宿命!?
人が集まる場所にスパムあり!?
「人が集まれば収益が上がる」という法則がある以上、ネット上ではズルをしてでも集客しようと考える「スパマー」が存在してしまうのは避けられないことでしょう。
これはインターネットプラットフォーマーにとって非常に厄介な存在であり、スパマーとの戦いはプラットフォーマーとしての宿命なのかもしれません。
「スパム対策」で有名であり、精度を年々上げているのがGoogleです。
検索エンジンは世界的な情報インフラとなり、集客力は強大なものです。その集客力に目をつけたスパマーはGoogleの仕組みを掻い潜り、不正に検索順位を上げるような施策を行ってきました。
このままではGoogleの検索ページがスパマーだらけに成ってしまう危機に、Googleは2012年ころから対策を強化し始め、現在では多くのスパムサイトを排除出来るようになっています。
スパム検知技術は言語解析までに渡り、コンテンツページがユーザーに役に立たないとGoogleが判断した場合、順位を下げるという処置を行います。
検索エンジンというプラットフォームの制裁力はとても強く、一度順位を下げられてしまうとほとんど集客数がない、事実上Webサイトが消滅したと同等のインパクトを受けることになります。
検索エンジンだけに限らず、プラットフォームと呼ばれるサービスではスパマーとプラットフォーマーが常に追いかけ合っている状態です。
一昔前、各携帯キャリアの公式サイトでスパムが横行したことがありました。審査が非常に厳しい公式サイトは、一度審査を通過すると安定的にキャリアユーザーを集客出来るというメリットがあります。そこに目を付けたスパマーは、その中で公式サイトを買い取り、携帯キャリアが知らないところでユーザーを別サイトに誘導するといった不正行為に及んだのです。
今ではスマートフォンアプリのプラットフォームであるApple(iTunes)とGoogle(Android)や、世界最大の動画プラットフォームであるYoutube、リスティング広告のGoogleAdwords,Yahoo!プロモーション広告などが、プラットフォーマーとして日夜スパム対策や違反ユーザー対策を行っています。
まとめ:この動きをどう見るべきか
プラットフォームからの集客に頼るコンテンツプロバイダーはいつ重要な集客口を絶たれるか分からないという大きなリスクを抱えています。
日々変わる各プラットフォーマーのポリシーやルールに、知らぬ間に違反する可能性も十分にあるわけです。
中には意図しない違反も当然多数発生しており、問答無用で削除されたり制裁を受けたりしてしまうコンテンツプロバイダーもいるでしょう。
ですから、上図のようなエコシステムでWebサイト等を運営する以上、プラットフォーマーの動向を日々注視することが大変重要なのです。
コンテンツプロバイダーは、「プラットフォーマ―はユーザーにとって利用価値の高いプラットフォームへの改善を永続的に続けていく」という前提を常に意識し、適切な対処を行いながらユーザーへ価値あるコンテンツを正しく提供していく必要があります。
各プラットフォームの規約を熟読し、ソーシャルメディアにおける社内ポリシーを作り上げるのは非常に骨が折れる作業でしょう。しかし、そこはないがしろにしないよう徹底してください。その判断がいずれWebサイトの明暗をわけることになるかもしれません。