「キーワード分析」はWebマーケティングに於いて最も重要なマーケティング分析タスクであり、分析の精度によっては施策結果を大きく左右します。
今までのキーワード分析と言うと、その多くが検索エンジンマーケティングを中心としたキーワードのマイニング(探し)でした。
しかし、既存のキーワードマイニング手法では中々潜在顧客が検索するであろうキーワードまで辿り着く事は難しく、対策するコンテンツマーケティング領域の抜け漏れが発生する事がありました。
ある程度、顧客の気持ちやサービス提供者であれば経験や感覚からキーワードマイニングの精度も上がりますが、それ程商品開発や営業に接していないマーケッターでは潜在顧客キーワードまで見つけるのは至難の業です。
そこで今回は、Yahoo!知恵袋に投稿されている内容から潜在顧客が抱えている悩みや問題を探し出し、キーワードとして抽出する方法をご紹介します。
Yahoo!知恵袋からキーワードマイニング
検索エンジンマーケティング(SEM)に於いてキーワードとは「ユーザーの意思」であり、「購入」や「通販」といったコンバージョンキーワードでアクセスを集める事がSEM施策の正攻法でした。
コンテンツマーケティングも同様で、キーワードは「顧客が知りたい事」を表しており、顧客を知る上でとても大切な要素です。
行く行くは、精査したキーワードから集客するユーザー層を定め、そのユーザー層に対してコンテンツを提供する事で顧客の創造を図るため、コンテンツマーケティング施策に於いてもキーワードのマイニング精度によってその効果が大きく異なります。
顕在顧客層の手間に居る潜在層を見つけ出すには、既存のキーワード分析とは別の手法を用いる必要があります。
例えば、人間ドックの申込をコンバージョン着地点として置いた場合、人間ドックを受けるユーザー層までは誰しも想像が付くはずです。
しかし、具体的な病名や身体の不調に気づく前の段階のユーザーの気持ち(情報を探そうと思う気持ち)までは、その当事者にならない限り中々思いつかないものです。
SEM系のキーワードマイニングツールでは、主軸ワードを元に更にキーワードの幅を広げることは出来ますが、顧客のマインドが全く異なる潜在キーワードまでは掘り起こす事ができません。
日本国内には随分前から複数のQ&Aサイトが運営されており、様々な「悩み」や「問題」、「解決したい事」などが文章として蓄積されています。
このデータを活用し、潜在層の気持ち(キーワード)を抽出できるのではないでしょうか。
大手FAQサイトの内、老舗の「OKWave」と大手ポータルサイトの「Yahoo!知恵袋」が圧倒的な質問投稿数を誇ります。(※質問投稿数は独自調査による)
精度を高める為には、各テーマに対して一定以上の質問(悩み)投稿数が必要であり、今回はYahoo!知恵袋をデータ取得元として利用しました。
質問データはYahoo!API経由で取得。
流れとして、まず始めにキーワード(主軸テーマワード)を元にYahoo!知恵袋から質問文を抽出。その後、テキストマイニングを精度高く行うべく不要な文章を削除し、データをクレンジングします。
最後に、テキストマイニングソフトウェアを用いてキーワードを可視化し、分析していきます。
初めに、コンテンツの主軸テーマ(キーワード)をGoogleサジェストなどを用いて広げます。
その後、検索回数を取得し、検索行動が発生し難いキーワードを削除します。
リンク:
・関連キーワード取得ツール
・Adwordsキーワードプランナー
テーマキーワードを抽出後、Yahoo!APIを通して知恵袋の質問文を取得します。
この作業は自動化すると楽にできますね。
質問文章の中には記号や改行など後のテキストマイニングでノイズの要因となる不要な文字が紛れ込んでいる為、この時点で削除してしまいましょう。
クレンジングを終えたデータを質問スレッド毎に改行で区切り、テキスト形式で保存します。
今回はKH Coderを使ってテキストマイニングを行ってみたいと思います。
先ほど保存したテキストファイルをKH Coderで読み込み、前処理を実行します。
前処理を行う事で、各文章を品詞毎に分解(形態素解析)し、後のテキスト分析を可能にします。
では、早速分析してみましょう。
今回は「メタボリックシンドローム」に関する悩みや潜在キーワードを例として分析してみます。
上図はクラスター分析の結果を一部キャプチャした物です。
メタボを気にしているユーザーが何に興味があるのか、似ている単語の組み合わせを階層ごとに可視化してくれます。
あくまでも一例ですが、食事に関する改善を考えている層や肥満の改善、運動改善軸、生活習慣改善軸、対象者に関する悩み・不安軸などが見て取れますね。
この分析図から潜在層向けのキーワードをある程度抽出できるのではないでしょうか。
次に、品詞ごとの抽出語を見てみましょう。
質問の文章を品詞毎に分解し、出現回数と共に一覧化した物です。
キーワード案の抽出リストとしても利用可能。どういった単語(悩み)が多く用いられているのか見えてくる。
出現回数が多い抽出語は、ユーザーの悩みや問題を表している可能性が高い為、KWIC機能を用いて深く解析してみましょう。
上図は「血圧」の例です。「血圧」を中心に質問文を検索すると、様々な悩みが見えてきます。
血圧を心配するユーザーは下記の様なメタボの悩みがあることが分かった:
・自分の血圧が正常なのに、体型がメタボなのは何故か?
・痩せているが高血圧なのは何故か?
・子供、夫の血圧が高くて心配。これは所謂メタボなのか?
以上から、潜在顧客層が見え、コンテンツ案の企画が作れそうですね。
上のスライドはサ変名詞「不足」の例です。
「運動不足」から「栄養素の不足」、「糖質不足による頭が働かない」などの「不足」に付随するメタボの悩みが見えてきました。
「筋トレ」も出現回数が多いキーワードです。
メタボ→運動という事で「筋トレ」は対策キーワードとして思いつくかと思いますが、ユーザーの悩みは意外にも筋トレした後の悩みや、その他のスポーツとの比較でした。
形容詞の「恥ずかしい」も意外に出現数が多い単語でした。
質問文から紐解くと、「メタボ」という単語を「病名」としてでは無く、「太っている」という表現をする単語として利用する傾向にあるようです。
又、想像も付かなかったフレーズとして「一緒に歩く 恥ずかしい」や「会う 恥ずかしい」などがありました。
これらフレーズは、コンテンツ案として利用出来そうですね。
上図は共起ネットワークの分析結果です。
共起ネットワークとは、出現パターンが似ているワードを分かりやすく紐付けたものです。
「基礎」と「代謝」など別々のワードとして認識されてしまうと、正確な分析ができませんので、出現ワードからフレーズを抽出し、強制登録をしておくと良いでしょう。
共起ネットワークの係数を変更する事で、出現回数が少ない単語も解析対象に出来ます。
上図はやや散らばっていますが、ここからもキーワードの抽出や繋がりを分析できます。
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以上、Yahoo!知恵袋の質問文をテキストマイニングでキーワード分割し、出現回数や繋がりを分析する事で、潜在キーワードや記事テーマを見つけ出してみましょう。
今回はテキスト分析を通して潜在顧客向けキーワードをマイニングする方法を説明しましたが、自社のアクセス解析やリスティング広告の配信レポート、競合サイト分析など様々なデータを分析し、自社の潜在優良顧客層を見つけ出してみましょう。
まとめ
●SEM系キーワード分析では潜在顧客層まで見つけ出すのは難しい。
●ユーザーの悩みが蓄積されているFQAサイトからキーワードをマイニング
●Yahoo!APIを用いる事で知恵袋のデータを簡単に取得できる
●KH Coderを使えば簡単にテキストマイニングが出来る
●出現語やクラスター分析、共起ネットワークなどを通してコンテンツテーマを探す