最近は当たり前化したGoogleサジェスト(オートコンプリート)ですが、スマートフォンに表示される検索キーワードサジェストは、ユーザーを誘導する力は強いと考えられます。
ブラウザの検索枠に検索キーワードを入力するとリアルタイムでサジェストが表示される為、ユーザーの意図に合っていればサジェストワードの検索結果画面へユーザーはアクセスしてしまいます。この様に、Googleサジェストによるユーザー誘導力は強いのでは無いかと考えます。
サジェストにより、ユーザーは実際のキーボード入力をせずともテールワード検索が出来るようになりました。もともと「バイト 渋谷」といったビッグワードで検索しようとしていたユーザーが、「バイト 渋谷 カフェ」と意思がより明確なワードで検索する様になり、各サイトはキーワードカバレッジを広げる必要性が出てきている様に思えます。
そこで今回は、テールワード(サジェストワード)がどの様なページにランディングしているのか、現在のSEO戦術はどの様なものなのか調査してみました。
サジェストワードのSEO調査
Googleサジェストは一部のワード(ポリシー違反で制限がかかっているワードや検索回数が少ないもの)を除いて、殆どのワードで表示されています。
その中でもある程度ユーザーによる検索回数が多く、キーワードのSEO難易度が高いワード領域であるアルバイト系を調査してみました。
サジェストワード1118個を抽出
上の図は軸ワードの一覧です。地域名とバイトもしくはアルバイトで掛けあわせた際の検索Volが最も大きいワード12個を選択しました。
a~z、1~9などの掛け合わせでGoogleサジェストを抽出し、各ワードの検索Volを抽出。
検索Volが10以上のワード1118個を抽出しました。
今回抽出したワード(n=1118)をGoogleで検索し、1位~10位のURLを取得しました。尚、今回検索した際にアクセス元として利用したIPアドレスにはGeo情報は含まれていない為、ベニスアップデートの影響は受けない検索結果を取得しています。又、Cookieは一切保存せずに結果を取得しています。
各ワードで上位に表示されるWebサイト(ドメイン)やランディング先として表示されるWebページのURLを取得し、これらテールワードでどの様なページが評価されているのかを調査しました。
大手Webサイトの「KWページ」が上位順位を獲得
取得したURL結果データから上位表示力が強いWebサイト(ドメイン)とランディング先を分析。
以下は、1118個のキーワードの検索結果から10位以内にヒットしているドメインの一覧です。
表右上の「ヒット率」は1位~10位の総ヒット個数÷1118個で算出しています。
100%に近い程、多くのキーワードで1ページ内に表示される可能性が高いと言えます。100%以上のドメインは、1キーワードの検索結果にて2個以上のURLが表示されている事を意味します。
以外にもサジェストワードでもタウンワークやバイトルなど大手アルバイト系DBサイトが上位に位置している様です。又、赤枠で囲ったドメインが殆どのキーワードで上位順位を獲得している事から、今回調査したサジェストワードのトラフィックがこれらドメインのみで獲得されている、と考える事が出来ます。
ランディングページの第1階層(ディレクトリ)毎に順位ヒット個数を集計したのが上図の表です。
ここで注目なのが、タウンワークやバイトル、FromAなどが全く同じ名前のディレクトリ「 /kw/ 」で半数近くのキーワードを獲得している点です。
webanも/keyword/というディレクトリで3割強のキーワードを獲得しています。
実際にランディングページのURLを見てみると、URLに検索クエリがエンコードされた形で含有されています。
ページの内容はフリーワード検索(DBの特定カラムをフリーワード検索している)ですが、ページのindex可否を自動的に判別する事で、一定のページ品質を保持しながらもテールキーワード専用のページを低コストで作成している事例です。
DBの区分カラムに含まれていない職種やこだわり条件の場合、このようなフリーワードページを利活用する事で対策しています。
例えばタウンワークでは「ネットカフェ」という固定一覧の区分は存在しません。
「カフェ」や「ファミレス」は存在しますが、より潜在顧客の意思が明確に現れたキーワード「ネットカフェ」の求人一覧は固定ページ上にはありません。
この場合、ネットカフェでもヒットさせる為には、カフェ求人一覧のページテーマに「ネットカフェ」という副次テーマを持たせるか、もしくは「ネットカフェ」の求人一覧ページを作成するかの方法になります。
低コストで一定のキーワードカバレッジを高める方法として、多くのDB系サイトはキーワードページを利活用する事で、固定カテゴリページでは獲得できないクエリをも獲得しています。
キーワードページを有効活用するには?
このキーワードページ、一見有効活用できるページの様に見えますが、利用の仕方によってはサイトの評価を大きく下げる要因にもなりかねません。
インデックス可否コントロールが出来ていない単なるフリーワード検索ページをインデックス解放すれば、重複や類似、意味不明なページが大量にインデックス化される危険性があります。当然、重複ページがインデックス化されれば、既存の固定ページや他ページの評価に悪影響を及ぼす可能性があります。
では、どの様な制御をかけてページを生成すれば良いのでしょうか。ここで例を出したいと思います:
(1)ブラックリストの整備
キーワードページとしてインデックスを許可してはならないワードや組み合わせをブラックリスト化します。
例えば固定カテゴリで対策しているワードはキーワードページで生成してはなりません。ページテーマがキーワードページと固定カテゴリページで混在する可能性がある為です。
既に他のページで対策しているワードはキーワード配下で生成しないようリスト化し、index判定に反映します。
事例としてMeryのタグ付け判定が挙げられます。
ユーザーが付与できるタグを自動的に精査しており、固定カテゴリページと同じ文字列を入力すると、上図の様な警告が表示されます。
(2)キーワードの組み合わせ判定
ワードの組み合わせ(複合ワード)毎にページを生成する場合、組み合わせ順によってページを生成しないよう制限する必要があります。
例として、「福岡 ネットカフェ バイト」と「ネットカフェ 福岡 バイト」では並び順が異なるだけで、クエリの意味としては略同一です。
スペースなどで区切られた複合ワードフレーズでページを生成する場合、過去同一の意味を持つフレーズでページを生成していないかDB内を照会し、インデックス判定を行うような仕組み作りが必要となります。
(3)同義語や表記の揺れの統一判定
以前、タグページの乱立を防ぐ仕組みとシステムの組み方でも説明しましたが、タグページやキーワードページをインデックス解放する場合、同義語や表記の揺れを統一する仕組みを完備する必要があります。
このブログ記事で説明している自動生成型の場合、この同義語・表記の揺れ判定をどれだけ精度高く用意するかが、後のページ品質保持に大きく関わってきます。
キーワードページとして出力予定のワード一覧を目視で確認し、類義語や同義語が存在しないか、存在する場合は表記統一リストの拡充を図ります。
参考:タグページの乱立を防ぐ仕組みとシステムの組み方
(4)フリーワード検索ヒット数
大量にキーワードのカバレッジを広げたのは良いものの、各ページの品質が一定を下回ると、順位上昇どころかサイト全体の評価低減に繋がりかねません。
ブラックリストから始まり並び変えのチェックや表記の揺れの精査を通過したワード(キーワードページ)が、最終的に何件の案件数を一覧ページとして表示できるかが一つの閾値になります。
例えば「愛知 バイト 吉野家 笠寺」といった非常にキーワードの検索需要も低く、尚且つ紐づく案件数も2件しかない場合、そのワードは一覧ページとして獲得するのではなく、求人案件ページで獲得するのが最善と考える事もできます。
以上の様に、検索需要とフリーワード検索をかけた際のヒット案件数はインデックス可否判定を行う上で一つの閾値となります。
キーワードページは万能なのか?
一切コンテンツを作る事なく、また既存システムに大きな手を加える事なく生成できそうなキーワードページ。低コストで大量のSEOトラフィックを獲得できそうな万能ページに見えますが、決してそうではなさそうです。
11月後半に発生していた検索結果変動によって、大手求人アグリゲーションの順位が変動しました。
上の図はSERPsモニタリングの順位レンジ別のヒット個数推移です。11月後半から急にヒット個数が減少しています。
SearchMetricsでも同様に11月後半に急変動しています。
クローリングしたデータからキーワードを抽出し、自動的にまとめる事で低コストで大量のトラフィックを獲得してきたアグリゲーションモデルですが、今回の検索結果変動(アルゴリズム変更?)で軒並み急変動している様です。
今までは、一定の品質(インデックス)を維持する事でパンダアップデートのリリース以降も順位を維持&上昇し続けていましたが、今回の検索結果変動では評価が下がった様に見受けられます。
Googleによるコンテンツ品質の認識精度とユーザー態度の評価が進むに連れ、今後アグリゲーションモデルでの順位戦術に変化が求められるのかもしれません。