先日、Homesを運営するネクストが世界最大級のアグリゲーションサイト「Trovit」を100億円で買収しました。
記者会見では、買収した一番の目的を「SEOノウハウ」の獲得と公言しており、ネクストの強みである営業とビッグワードSEOのノウハウと、Trovit社が得意とするテールワードのSEOノウハウを融合する事で、世界規模の進出を図ろうとしているのでは無いかと思われます。
そこで今回は、ネクストを魅了したTrovitのSEO効果を分析してみたいと思います。
※弊社独自の調査結果です。
2015/04/14:TrovitJapanの調査記事を掲載しました
調査対象のキーワード
Trovitはその本社をスペインに置き、ラテン語圏を中心に各国でアグリゲーションサービスを展開しています。実際にどの位のSEO集客力があるかを、不動産市場が大きい米国のGoogle順位を調査しました。
様々な不動産系キーワードをリストアップし、GoogleAdwordsの検索ボリュームを調査しましたが、日本と同様に米国(英語圏)でも基本的には「地域名×不動産・アパート・賃貸」が検索語句としては主流のようでした。
以上から、調査対象キーワードは日本の検索動向と同じく、地域名×賃貸や物件名としました。
地域名検索語句は、カルフォルニアといった「州名」とロサンゼルスといった「主要都市名」を抽出し、日本語の「賃貸」に該当する「for rent」や「for sale」、「house」などと掛け合わせました。
又、物件名などは各賃貸情報サイトからランダムに抽出しました。又、Home.Trovitの一覧ページに表示されるテールワード一覧も抽出し、「trovit_テールワード」として調査対象としました。
合計調査キーワード数:670個
↑デンバー市賃貸一覧ページに表示されるテールワード群。これらワードをTrovit_テールワードとして調査。
順位調査結果
GoogleUSの順位を調査し、検索結果ページ単位で表示されるキーワード個数をプロットしました。
記者会見で説明が合った通り、trovit.comはテールワードの上位表示力が強い事が分かる結果となりました。
「Trovit_テールワード」の順位は、他の大手賃貸比較サイトとほど同等の位置にあり、物件専門サイトとほぼ変わらない程の上位表示力を保有していると考えられます。
SEOの難易度が高い「都市名×for rent」などは、専門サイト群の主戦場となっており、trovitはほぼ上位順位には位置していない事が分かります。
Trovitの強み
井上社長の記者会見では、終始TrovitのSEO技術の高さに関して説明がされていました。
確かにテールワードでの上位表示力は順位結果からも強い傾向にありますが、一体どのような仕組みなのでしょうか。
アグリゲーションならではの低コスト構造
本来、比較サイトなどDB量が要となるWebサービスの場合、案件(ページ数)の数がWebサイトの集客力に影響するKPIとなります。
不動産であれば不動産数が多いほど情報量が多いサイトであり、ユーザーの情報利便性も高まります。
しかし、DBに入力する案件は、営業部隊などが実際に稼働して獲得しなければなりません。手間のかかる契約処理や入稿作業、そしてデータのメンテナンスには膨大な工数(=コスト)を要します。
これに対し、アグリゲーションサイトはBot(Webクローラー)を用いて各サイトから情報を集取し自社のWebサイトに掲載する為、案件を獲得し位置する為のコストを掛けずに自社サイトの情報量を増やす事ができます。
homes.trovit.comの一覧ページに表示される物件一覧リンクも、その全てが他Webサイトへリンクしており、trovit.com内には物件の詳細データページを設けてはいません。
分かりやすく表現すると自動的にカテゴライズされた情報ページリンクの一覧を生成するWebサービスとも言えるでしょう。
自動化されたSEOシステム
アグリゲーションサイトの場合、サイト内外の検索クエリなどをベースにランディングページを無限に増やす事ができます。
しかし、この生成方法では各ランディングページの品質を保持出来ず、Googleのパンダアップデートによって検索順位が下落する可能性があります。
又、単純に情報をかき集めただけのページは、コンテンツのオリジナル性が低い事からGoogleの評価を受ける事ができず、順位は圏外を推移する可能性もあります。
参考:「ユニークな情報持たないアグリゲーションサイトはNG」 米Google
以上から、通常のアグリゲーションサイトは今のGoogleの方針と合わない為、検索順位を上げる事は非常に難しい環境に置かれています。
あくまでも推測ですが、TrovitはGoogleにインデックス登録を許可するランディングページをGoogleの品質判断基準に合わせて自動的に判別する技術がある為に、上位順位を獲得できる仕組みを作り上げているのだと考えられます。
例えば上図はデンバー市賃貸一覧ページに表示されるテールワード対策ランディングページへのリンクです。
Googleはこのリンクを辿って新たに生成されたランディングページをインデックス登録している訳ですが、恐らくこのランディングページの生成基準を自動的に行なっている可能性があります。
想定する自動生成&判別方法
如何に自動化しているか、その仮説として考えられるのが登録データからの関連キーワードの抽出方法です。
都市名や州名、駅名など予めインデックス登録が許可されているキーワードを含むデータレコードを検索します。タイトル文や一部文章の抜粋文などから形態素別に単語を抽出し、一定数が抽出される場合はフリーワード検索した場合でも検索該当案件数が一定数を超える為、インデックス対象としてもページの品質を保持できます。又、該当する物件があると言う事は、消費者需要があるとも仮定できる為、ランディングページのインデックス登録を許可する事は至ってリーズナブルでもあります。
以上はあくまでも私の推測にしか過ぎませんが、これら自動化これにより、各単語から関連するテールワードを抽出し、関連するページ通しでページを生成&紐付ける事ができる為、より強固なテールワードのSEOが出来ているのでは無いかと考えられます。
その他、2ページ目以降をcanonical処置したり、外部リンクへのリンク評価の受け渡しを排除したりと、細かな所までSEO施策を施しているのもTrovitSEOの特長でもあります。
これからのTrovit
今回の調査では、Trovitは卓越した自動化によりテールワードの流入を獲得する為のランディングページを自動判別&生成し、インデックス公開している事が分かりました。
又、判別精度が高い為か、サイト全体のコンテンツ品質を維持できており、結果的にテールワードの上位表示力は他大手サイトと肩を並べる程の力がある事も分かりました。
今後は、日本のHomesが得た「ビッグワード向けのSEO」のノウハウを用いて、テールワード以外のキーワードも順位が上昇してくるのでは無いかと思います。
又、アグリゲーションサイトは現在Googleが掲げている方向性(パンダアップデートに代表されるコンテンツ品質重視)とは逆を行っているような印象を受けまが、indeed.comなど一部アグリゲーションサイトはむしろ順位を維持&上昇しており、これら傾向を見てもサイトのコンテンツボリュームやテーマのコントロールで十分に順位上昇を図る事が出来るのかもしれません。