(当記事は2016年11月に書かれたものを、2019年7月に加筆・修正したものです。ご了承ください。)
近年、重要性が高まっているWebサイトへの構造化データの導入。SEOの観点からも頻繁に話題になっていますよね。
今回は、構造化データの基本や構造化データのマークアップの記述方法、そしてSEOへの影響やテストツールの使い方について説明していきたいと思います。
目次
○ 構造化データとは?
○ 構造化データのメリット
○ ボキャブラリーとシンタックスの種類
○ 構造化データの作り方
○ 構造化データテストツールの使い方
○ サーチコンソールで構造化データを確認
○ 構造化データの将来
構造化データとは?
構造化データとは、HTMLで書かれている情報を検索エンジンやクローラーが理解できるよう、タグ付けしたものを指します。
通常検索エンジンは、HTMLに記載された文字列を単なる記号としてしか認識することができず、その文字列がどのような意味を持つのかを理解することは困難です。
そこで、文字の意味や背景まで解釈・蓄積し、検索エンジンにも理解できるようにしていこうというのが「セマンティックWeb」の考え方であり、検索エンジンとしては記号としてしか認識していなかった文字列の意味を理解し、データとして蓄積していく試みでもあります。
構造化データはセマンティックWebを実現するための手段の1つといえるでしょう。では、なぜセマンティックWebという考え方が必要なのでしょうか。
それは単純なことで、文字が持つ意味をメタデータとして紐付けることで、検索エンジンがその内容を解釈できるようにし、よりユーザーニーズに沿った検索結果を提供するためだからです。これを「セマンティック検索」といいます。
例えば下記のような文字列を構造化マークアップすることを考えます。
●株式会社CINCは東京都港区にあります。
私たちは、「株式会社CINC」が会社名、「東京都港区」が所在地であることが容易にわかりますが、検索エンジンはこれを読み取ることができません。
そこで、
●会社の名前は「株式会社CINC」です
●所在地は「東京都港区」です
という2つの内容に分け、それぞれを検索エンジンに明確に伝えようというのが構造化データの仕組みです。
構造化データのメリット
ウェブマスター向けのチャットイベント「オフィスアワー」で、Googleのジョン・ミューラーが構造化データ マークアップについて以下のようにコメントしています。
「現在のところ構造化データによる直接的な順位上昇効果はないが、今後ランキング要因に含める可能性がある」
English Google Webmaster central office-hours hangout
上記にように構造化データの導入によるSEO的なメリットは現在のところはほとんどありませんが、検索結果にリッチスニペットが表示される可能性があります。構造化データをマークアップする目的は、セマンティックWebへの貢献(将来的なSEO効果への期待を込めて)と、このリッチスニペットにあると言ってよいでしょう。
検索結果には通常、descriptionタグかページの一部分を抜粋したテキストがスニペットとして表示されますが、構造化データを導入している場合、構造化データに基づいてページ内容をより詳細に紹介する「リッチスニペット(リッチリザルト)」を表示させることができます。
例えば、ホテル紹介のページであれば、ホテルの評価やパンくずリストが、レシピを紹介するページであれば料理の画像などが、リッチスニペット(リッチリザルト)として表示されます。
その他、記事の著者の情報や飲食店の評価、カル―セルなどもリッチスニペットとして表示されることがあります。
リッチスニペットは目立つため競合他社サイトとの差別化が計れるうえ、ページの内容を検索ユーザーに的確に伝えることができるので、ユーザーにクリックされやすくなるというメリットがあります。
また、リッチスニペット以外にもナレッジグラフ・パネルやGoogleしごと検索で表示される可能性もあります。(企業の場合、Googleマイビジネスの登録は必須です)
デメリット
ほとんど気にならない程度かもしれませんが、構造化データをマークアップすることでデメリットが生じる場合もあります。
たとえば、単純にソースコードが複雑になることが挙げられるでしょう。そのことから、htmlのサイズが大きくなり、ページ表示スピードに悪影響を及ぼしてしまうかもしれません。
また、そもそも構造化データの記述に工数がかかってしまいますし、検索エンジンアルゴリズムのアップデートにともなうメンテナンスも考慮にいれる必要があるでしょう。
リッチスニペットの条件
構造化データを正しくマークアップしたからといって、必ずしもリッチスニペットが検索結果に表示されるというわけではありません。少なくとも以下の3つの条件をクリアする必要があります。
・リッチスニペットの品質ガイドラインに従っていること
ユーザーに表示されないコンテンツをマークアップすることや、スパムのような、あるいは誤解を招くような、または関連がないコンテンツをマークアップすると、Googleはそのマークアップを無視したり、悪質な場合は手動ペナルティを与える可能性があると言及しています。
リンク:リッチスニペットガイドライン│リッチスニペット品質に関するガイドライン(日本語)
・検索クエリとの関連性
ユーザーが検索した語句と照らし合わせてリッチスニペットを表示させるのが適切かどうか、その関連性。関連性が薄い、あるいはない場合はリッチスニペットを表示しないようにアルゴリズムが判断します。
・コンテンツのクオリティ
コンテンツの質が低いとリッチスニペットは表示されません。コンテンツの質に関しては、Googleのウェブマスター向けガイドライン(品質に関するガイドライン)に準拠します。
新たに導入されたリッチスニペット(リッチリザルト)
2018年の12月にリリースされていたQ&Aに続き、Googleは今年の5月に以下の二つのリッチスニペット(リッチリザルト)を新しくリリースしています。
・FAQ
・How-To
FAQ(Frequently Asked Question)とは、ご存知の通り「よくある質問」のことです。これはユーザーが回答するQ&Aとは異なり、企業側が良くある質問と、その答えを検索結果上に表示するリッチスニペットになります。
一方でHow-Toは、いわゆる「~のやり方」「~のしかた」といった方法や手順を検索結果上に表示するリッチスニペット(リッチリザルト)になります。上図のFAQと同じように、リスト部分をクリック(あるいはタップ)すると、簡潔な説明や画像などで方法や手順を見ることができます。
なお、FAQやHow-Toのマークアップについては、ここでは紹介しませんがご了承ください。
詳しく知りたいという方は、Googleの公式サイトで二つのリッチスニペット(リッチリザルト)の実装方法について紹介していますので、ぜひご覧ください。
FAQについてはコチラ⇒よくある質問 | 検索 | Google Developers
How-Toについてはコチラ⇒ハウツー | 検索 | Google Developers
ボキャブラリーとシンタックスの種類
構造化データを理解する上で特に重要なワードが「ボキャブラリー」と「シンタックス」です。
ボキャブラリーはマークアップする物事を定義するもの、シンタックスはそのマークアップの記述方式のことです。
ボキャブラリー
ボキャブラリーの代表例はschema.orgです。
schema.orgはGoogle、Yahoo、Microsoftが策定を進めてきたボキャブラリーの規格です。
schema.orgでマークアップする際にはタイプとプロパティを指定します。
会社情報をマークアップする場合、会社名や所在地はもちろん、電話番号などを情報として含める場合はもあります。
この場合、タイプ“Corporation”を選択し、”name””address””telephone”などの属性を指定して構造化マークアップを実施します。
schema.orgのタイプ
Corporationの属性
シンタックス
ボキャブラリーは値を定義しているだけのものですので、実際にマークアップする際の仕様が必要で、その仕様がシンタックスです。
シンタックスには代表的なもので以下の3つがあります。
●Microdata
●RDFa
●JSON-LD:
構造化データの作り方
構造化データを導入する際には大きく2つの方法があります。
●HTMLに直接マークアップする方法
●構造化データマークアップ支援ツールを用いる方法
HTMLに直接マークアップする方法
1つ目はHTMLに直接マークアップする方法です。
この方法はある程度の構造化データの知識が要求され初心者の方には難易度が高いため、次項で説明するツールを用いた方法でマークアップすることをおすすめします。
ここでは下記HTMLをボキャブラリー:schema.org、シンタックス:microdataでマークアップする方法を解説します。
<div>
株式会社CINCは東京都港区にあります。ホームページは
<a href=”https://www.cinc-j.co.jp/”>
https://www.cinc-j.co.jp/
</a>
です。
</div>
まず、最初のタグで使用するシンタックスを宣言します。
今回の場合は、タグ中で”itemscope”と記述します。
<div itemscope>
株式会社CINCは東京都港区にあります。ホームページは
<a href=”https://www.cinc-j.co.jp/”>
https://www.cinc-j.co.jp/
</a>
です。
</div>
次に何の情報なのか、「タイプ」を指定します。
今回の場合は、会社の情報なのでhttp://schema.org/Corporationを用います。
<div itemscope itemtype="http://schema.org/Corporation">
株式会社CINCは東京都港区にあります。ホームページは
<a href=”https://www.cinc-j.co.jp/”>
https://www.cinc-j.co.jp/
</a>
です。
</div>
最後に「プロパティ」を指定し、会社の各情報をマークアップしていきます。
今回は会社名、住所、ホームページURLをマークアップします。
<div itemscope itemtype="http://schema.org/Corporation">
<span itemprop="name">
株式会社CINC
</span>
は
<span itemprop="address">
東京都港区
</span>
にあります。ホームページは
<a itemprop="URL" href=”https://www.cinc-j.co.jp/”>
https://www.cinc-j.co.jp/
</a>
です。
</div>
構造化データマークアップ支援ツールを用いる方法
サーチコンソールには「構造化データマークアップ支援ツール」というものがあります。
HTMLに直接マークアップする場合は、schema.orgなどを熟知している必要があり、ハードルが高めですが、このツールを用いることによって容易に構造化データのマークアップが可能になります。
上記ページで「記事」を選択し、対象ページのURLまたはHTMLを入力して「タグ付けを開始」をクリックすると、マークアップ画面が表示されます。
「記事」を選択しているため、記事に関わるデータが画面右側に表示されます。
それに対応する項目をカーソルで指定していきます。
ここでは「著者」を選択することにしましょう。
選択した部分が著者情報として指定されます。
同じ要領で他の項目を選択します。
すべて指定し終えたら、画面右上にある「HTMLを作成」をクリックし、構造化データがマークアップされたHTMLを取得します。
上記で取得したHTMLをサイトに反映させることで、構造化マークアップが完了します。
構造化データテストツールの使い方
Googleが提供している構造化データテストツールで構造化データが正しく記述されているかどうかを確認することができます。
構造化データが導入されたページのURL、またはタグを入力することで正しくマークアップされているかどうか確認することができます。
文法ミスやプロパティの不足がある場合はエラーが表示されますので、アドバイスに従って修正を行ってください。
サーチコンソールで構造化データを確認
構造化データテストツールは、1つのURLまたは1つのコードしか確認できませんが、サーチコンソールの「構造化データ」では、サイト内の構造化データにエラーがないかどうかを一覧で確認することができます。
構造化データテストツールのようにエラー内容の詳細までは確認できませんが、サイト全体の構造化データがGoogleにどのように認識されているかの状況を確認することができます。
構造化データの将来
構造化データマークアップを実施することにより、検索エンジンだけでなく、じつはユーザーもページの内容を理解しやすくなります。そう聞くと、ぜひとも取り入れなければならないと思いがちですが、構造化データでマークアップし、リッチスニペットを検索結果に表示したとしても、必ずしもトラフィックが増加するわけではありません。むしろ、表示回数だけ増加してトラフィックは減少する、というネガティブな影響も実際に報告されているようです。
ただなんとなく行うのではなく、構造化データをマークアップして何を得たいのか、何を達成したいのか考える必要があります。
また、構造化データによってリッチスニペットが検索結果に表示されたのであれば、どんな効果をあげているのかモニタリングすることも大切です。これは、サーチコンソールで確認することができるので、詳しくはGoogleウェブマスター向け公式ブログをご覧ください⇒Search Console で構造化データのモニタリングする
Googleは、このさき構造化データを活用した「検索結果の充実」を加速させていくでしょう。したがって、今後はさらに構造化データの重要性が高まってくる可能性があります。
未導入という方は、導入の是非を早いうちから検討しておくことをおすすめします。また、これからサイトを作るという方は、構造化データと相性の良いCMSについて調べておくなど、予め対策をしておくといいかもしれません。