検索結果上の状況を知ることは、SEO市場を知るということです。市場の状況を知ることは、自分のサイトが競争社会で結果を出すためにとても重要です。自サイトの課題と改善点を見つけ、市場での勝ち方を身に付けて実行するには、現状把握と競合を知ることから始まります。
今回は、家具・インテリアECのSERPs市場がどうなっているのか、現状を調査しました。
【目次】
1. インテリアECは群雄割拠
2. SERPs市場調査の方法
3. SERPs調査結果
4. 各キーワードカテゴリのSERPs市場状況
5. Tabroom:家具・インテリア系の新興ECサイト調査
6. インテリア・サプリ:家具・インテリア系の新興ECサイト調査
7. 家具・インテリア系EC領域SERPs市場調査まとめ
インテリアECは群雄割拠
現在、家具・インテリアEC業界は群雄割拠の時代です。老舗のECサイトが上位に並ぶ中、新興ECサイトが割って入っている状況となっています。
例えば、家具・インテリアECといえば次のようなサイトを思い浮かべるでしょう。
●老舗、有名インテリアEC
<ニトリネット>
https://www.nitori-net.jp
実店舗でも有名な大手家具・インテリアショップの通販サイトです。
<IKEA>
http://www.ikea.com/
低価格、かつおしゃれな海外産の家具、インテリアショップです。実店舗も人気があり、知名度は高いでしょう。
<無印良品>
https://www.muji.net/store/
若者を中心に人気のあり、実店舗が主流の家具・インテリアショップです。
無印良品のサイトの1ディレクトリを利用しています。
<Franc franc>
http://www.francfranc.com/shop/
スタイリッシュでおしゃれなインテリアが商材です。
こちらも実店舗で人気を得ているショップです。
●高級家具店
有名高級家具店もECサイトを持っています。
<大塚家具>
http://www.idc-otsuka.jp/item/
<東京インテリア>
http://www.tokyointerior.co.jp/
●有名家具メーカー
有名な家具メーカーもネットショップを持っているようです。
<アクタス>
http://online.actus-interior.com/
<カリモク家具>
http://www.karimoku.co.jp/
●大手カタログ系インテリア、ファッションEC
大手カタログ通販ショップはもちろんECサイトも持っています。
<ベルメゾン>
http://www.bellemaison.jp/
<ディノス>
https://www.dinos.co.jp/
<セシール>
http://www.cecile.co.jp/
<ニッセン>
http://www.nissen.co.jp/
●Amazon、楽天
<Amazon>
https://www.amazon.co.jp/
業界を問わず、ECサイトにとっての競合サイト候補となる総合ECモールです。
<楽天>
日本最大のECモールです。複数のサブドメインを持ち、それぞれが各機能を持ちます。
・本体
http://www.rakuten.co.jp/
・検索結果
search.rakuten.co.jp
・ランキング
ranking.rakuten.co.jp
・商品
item.rakuten.co.jp
●新興家具・インテリア系ECサイト
有名な家具・インテリアショップのほかに、新興家具・インテリア系ECサイトもSERPsに多数存在します。
<lowya>
https://www.low-ya.com/
<re:ceno>
http://www.receno.com/
<noce>
http://www.noce.co.jp/
<北欧、暮らしの道具店>
https://hokuohkurashi.com/
<tabroom>
https://tabroom.jp/
<リグナ>
http://www.rigna.com/
<flymee>
https://flymee.jp/
SERPs市場には、上記のように、新旧多数の家具・インテリア系ECサイトが存在します。この業界で勝つためには、これらのサイトがSERPsでどの位置にあるのか、また、彼らがどのような戦略・戦術で戦っているのかを知る必要があります。
●検索結果(SERPs)上の家具・インテリア系EC市場の調査
群雄割拠な家具・インテリア系ECのSERPs市場を把握するため、どのサイトが強いのか、どのサイトがSERPs市場で勝っているのか、家具・インテリア系のキーワードにおけるSERPsの状況を調査しました。
SERPs市場調査の方法
SERPs市場を調査するため、SERPsの上位表示ページを全取得しました。
家具・インテリア系キーワードの検索結果1位~10位に出現するすべてのURLを取得・集計し、キーワード占有度が高いドメインを調べました。
●SERPs調査利用指標
・ヒットキーワード数(=キーワード占有率)
各ドメインにおける、1位~10位以内にヒットするキーワード数を計上しました。また、10位以内ヒットキーワード数の構成比から、SERPs市場占有率も算出しました。
ヒット数が多い(=SERPs市場占有率が高い)ほど、SERPs市場で面を取ることができていることを示します。
・想定流入数
ヒットキーワードの想定される流入数を算出し、当該ドメインが調査キーワードにおいて獲得している流入数の比較に利用しました。
想定流入数の算出方法は次の通りです。
想定流入数 = キーワードの検索vol × 順位別のCTR
順位別のCTRは、AWR発表の最新の値を参考にしました。
https://www.advancedwebranking.com/cloud/ctrstudy/
・各指標による評価例
ヒットキーワード数と想定流入数をもちいて、各ドメインを総合的に評価しました。
ヒットキーワード数が多い ∧ 想定流入数が多い
∟SERPs市場の面が取れていて、検索数が多いキーワードで上位を獲得している。
ヒットキーワード数が多い ∧ 想定流入数が少ない
∟SERPs市場の面が取れていており、ミドル・テールワードで順位を獲得している。
ヒットキーワード数が少なく ∧ 想定流入数が多い
∟SERPs市場に於いて点で勝負しており、検索数が多いキーワードで上位を獲得している。
ヒットキーワード数が少ない ∧ 想定流入数が少ない
∟SERPs市場に於いてキーワードを獲得できず、上位も獲得できていない。
●調査キーワード
家具・インテリア系ECサイトの顕在層向けワード16,395個を対象に調査しました。
調査対象としたキーワードには、次のようなものが含まれます。
商品名キーワード:ソファ、照明など
ブランド名キーワード:ハーマンミラー、カッシーナなど
EC向けキーワード:「ソファ おしゃれ」「インテリア 通販」など
SERPs調査結果
SERPsを取得し調査した結果は、想定したものと少し異なっていました。
●想定流入数ベース評価
SERPsを取得した結果を集計し、各ドメインのレンジ別ヒットキーワード数、全体の合計想定流入数を計上しました。
表は、想定流入数上位30位のドメインのレンジ別ヒットキーワード数と想定流入数です。
想定流入数の1位はニトリのECサイトでした。実店舗同様、市場における影響度は強いようです。
また、Amazon、楽天の各ドメインはこの領域において多くの流入を獲得しているようです。特徴的なのは、EC向けのキーワードであるにもかかわらず、記事コンテンツを主体とした、メディア系サイトが11位~20位の間に位置していることです。
EC領域においても、テキストコンテンツの影響は無視できないことがわかります。
<サキドリ>
sakidori.co
<カウモ>
kaumo.jp
<キナリノ>
kinarino.jp
●ヒットキーワード数ベース評価
次の表は、SERPs上のキーワードヒット数上位30位のドメインのレンジ別ヒットキーワード数と想定流入数を示したものです。これらのサイトが家具・インテリア系EC領域におけるSERPs市場のシェア上位サイトとなります。
結果は楽天の独占状態でした。
search.rakuten.co.jpで全体の26%のキーワードを占有し、複数のドメインを合計すると、全体の35%のキーワードを占有していることがわかります。
次点がAmazonで、全体の8%のキーワードを占有しています。それをベルメゾンが追い、その後ろを自社ブランドのECサイトが追っている状況です。
10位以下には、想定流入数同様、カウモ、キナリノ、サキドリなどメディア系サイトが出現しており、家具、インテリア系EC領域で面を取るためにもテキストコンテンツが重要であることがわかります。
ヒットキーワード数ベースでは、下記のような、上位に食い込んでくる新興勢力も認められます。
<インテリア・サプリ>
simplemodern-interior.com
<Tabroom>
tabroom.jp
各キーワードカテゴリのSERPs市場状況
SERPs取得キーワードをブランドカテゴリ、コンバージョン系・非コンバージョン系によってキーワードをカテゴリ分類し、複数の観点から家具・インテリア系の上位サイトの状況を調査しました。
全体のヒットキーワード数上位に位置するECサイトの、各キーワードカテゴリにおけるレンジ別ヒットキーワード数と想定流入数を計上した結果を報告します。
●高価格ブランド系ワード
高価格帯ブランドのキーワード領域での、上位サイトのレンジ別ヒットキーワード数と想定流入数を表3に示しています。
高価格帯ブランド系キーワードは、「ハーマンミラー」「アダル」のようなブランドを含む、926キーワードが対象です。
このカテゴリでは、楽天とamazonが全体の7割のキーワードを獲得している状況でした。それ以外のサイトでは、Tabroomのヒットキーワード数が多く、このカテゴリでキーワードの面を取っていることがわかります。しかし、想定流入数が伸びておらず、検索数が少ないワードを数多く獲得していることが想定されます。
●低価格ブランド系ワード
低価格帯ブランドのキーワード領域における、上位サイトのレンジ別ヒットキーワード数と想定流入数を表4に示しています。
低価格帯ブランド系キーワードは、「ニトリ」「IKEA」のようなブランドを含む、2,009キーワードが対象です。
このキーワードカテゴリでも楽天とAmazonがキーワードを占有し、全体の85%のヒットキーワード数を獲得している状況です。また、価格.comの想定流入数がヒットキーワード数に比べて多く、検索数が多いキーワードで上位を獲得していることが想定されます。
●ラグジュアリーブランド系ワード
ラグジュアリーブランド系のキーワードカテゴリにおける、上位サイトのレンジ別ヒットキーワード数と想定流入数を表5に示しています。
ラグジュアリーブランド系キーワードは、「Franc franc」「armonia」のようなブランドを含む、1,444キーワードが対象です。
このキーワードカテゴリでは、価格.comが少ないヒットキーワード数で多くの想定流入数を獲得、検索数が大きなキーワードで上位獲得していることが想定されます。
また、tabroomはキーワードの面をとっており、検索数が少ないキーワードを多数獲得していることが考えられます。
●カジュアルブランド系ワード
カジュアルブランド系のキーワードカテゴリにおける、上位サイトのレンジ別ヒットキーワード数と想定流入数を表6に示しています。
カジュアルブランド系キーワードは、「山善」「オカムラ」のようなブランドを含む、1,491キーワードが対象です。
このキーワードカテゴリでは、楽天とAmazonが占有している状況でした。楽天の各ドメインとAmazonで全体の85%のキーワードを占有しています。それ以外のドメインでは、価格.comが6%のキーワード占有率でしたが、他に強者は存在していない状況です。
●コンバージョン系ワード
コンバージョン系のキーワードカテゴリにおける、上位サイトのレンジ別ヒットキーワード数と想定流入数を表7に示しました。
コンバージョン系キーワードには、「商品名×通販」の掛け合わせワード、「商品名×安い」の掛け合わせワードのようなキーワードが含まれています。
コンバージョン系のキーワード領域でも楽天の占有率は高く、全体のヒットキーワード数の6割を占有していました。
楽天以外では、価格.comとベルメゾンが全体の1割以上のヒットキーワード数を獲得し、ある程度のキーワードのシェア数を得ている状況でした。
●非コンバージョン系ワード
非コンバージョン系キーワードカテゴリにおける、上位サイトのレンジ別ヒットキーワード数と想定流入数を表8に示しました。
含有ワードには、「商品名×和室」、「商品名×おしゃれ」などがあります。
非コンバージョン系キーワードでも楽天がキーワードを占有している状況であり、全体の50%のキーワードを占有しています。また、Amazonが15%のキーワードを占有していました。想定流入数ベースでは、このキーワードカテゴリではベルメゾンが上位3位と上位に位置しており、検索数が多いワードで上位獲得していることがわかります。
●キーワードカテゴリ別SERPs市場調査まとめ
キーワードカテゴリ別のSERPs市場をまとめると、下記がわかりました。
・楽天、Amazonがすべてのキーワード領域でヒットキーワードを占有
・価格.com、ベルメゾンが上位に位置
・ラグジュアリーブランド、高価格帯ブランドワードカテゴリで、新興ECサイトTabroomが奮闘
家具・インテリア系ECサイトでは、やはり楽天・Amazonが市場を占有し、有名ECサイトが上位を獲得している状況のようです。
しかし、ブランドワードの観点から、Tabroomはブルーオーシャンを攻めていることもうかがえ、勝てるキーワードカテゴリで戦い、成功していると考えられます。
Tabroom:家具・インテリア系の新興ECサイト調査
今回、家具・インテリア系ECサイトのSERPs市場で上位に位置し、SEO上で成功している2つの新興ECサイトを取り上げ、後発サイトの戦略を分析しました。
●2016年4月~2017年3月の上位サイト流入状況
SERPsの取得・調査・横断的な比較によって、現在のSERPs市場を分析しました。しかし、縦断的な調査でも、上位サイトに高い評価を与えることができるでしょうか。
SERPs市場を占有している上位サイトを対象に、SEO評価の伸びを分析しました。
ヒットキーワード数上位のECサイトにおける、Organic経由流入数の状況を表9に示しています。Similarweb ProのOeganicTrafficを基に、各ドメインのOrganic1年間成長数、成長率を計上しています。グレーで色分けされたドメインは昨年以降にオーガニックで流入減少しているドメインです。
上位ドメインのOrganic1年間成長数と成長率を見ると、SERPs上でヒットキーワード数上位サイトの多くが、SEOで苦戦していることがわかります。
過去1年間でOrganic Trafficは減少しており、SERPs上の(Googleからの)評価を伸ばすことができていない状況です。有名、老舗の家具・インテリア系ECサイトでは、楽天・Amazonのほかに、ニトリECサイトのみがSEOで流入を伸ばすことができています。
そのほか、Organic Trafficを伸ばし、SEOで評価を向上させているのは、Tabroomとインテリア・サプリの新興ECサイト2つでした。
すなわち、縦断的な評価をすると、SERPs市場における強者は楽天、Amazonのほかに、ニトリEC、インテリア・サプリ、Tabroomを挙げることができます。
●Tabroom
新興家具・インテリア系ECサイト、Tabroomの戦略を調査します。
Tabroomは2013年3月に家具・インテリア情報サイトとしてサービスを開始し、ECサイトをオープンしたのは1年4カ月の2014年7月のようです。
・Tabroomの流入状況
Tabroomのチャネル別流入比率と推移を見ると、全流入の60%をオーガニック経由で獲得しており、SEOが主要な流入元であることがわかります。
また、ダイレクトで全体の18%の流入を得ており、一定数のファンがついていることが想定されます。
・Tabroomのサイト構造
Tabroomのサイト構造が下記のようになっていると把握しています。
一覧ページが各検索項目の階層構造となっており、商品カテゴリ、ブランドカテゴリ、デザイナーカテゴリを持っています。また、特集ページなどの記事コンテンツも専用のディレクトリで設置されています。
内部リンクの論理構造から、サブカテゴリ、商品カテゴリにおいて、Googleからの評価向上を図っていることがうかがえます。論理構造上、サブカテゴリの下に商品ページがあり、サブカテゴリ、商品カテゴリに評価を集約していることからもわかります。
このような論理構造を構築することで、Googleからの評価を向上させてきたと推測されます。
・ディレクトリ別オーガニック経由想定流入数
Tabroomがどこで流入を獲得しているのか、ディレクトリ別に想定流入数を計上し調査しました。結果を表10に示しています。
結果、Tabroomは記事コンテンツのディレクトリで全体の45%の流入を獲得していました。つまり、コンテンツでオーガニックから流入を獲得し、ECサイトへ回遊させていく手法をとっていると考えられます。
Tabroomのコンテンツ配下に対する記事投下数を調査すると(Googleインデックスベース)、/event/配下への投下数が多いことがわかります。すなわち、このカテゴリにリソースが投下されているのです。しかし、流入を獲得しているのは別のディレクトリ、/shop/配下でした。コンテンツ配下における41%の流入を/shop/配下で獲得しており、ここに投下される記事コンテンツがSEO流入の主力であることがわかります。
以上より、TabroomのSEOにおける戦略は、ブランド系ワードを狙い、/shop/配下=店舗関連の記事コンテンツを用いることで、Googleからの評価を獲得するものであるといえます。
インテリア・サプリ:家具・インテリア系の新興ECサイト調査
SERPs市場上で上位を獲得するもう一方の新興ECサイト、インテリア・サプリを取り上げて調査しました。
インテリア・サプリのドメイン取得は2014年6月と比較的新しいECサイトです。インデックス数は794とほかのECサイトと比較し非常に少ないことがわかります(ニトリEC:104,000、Tabroom:439,000、ベルメゾン:689,000、Flymee:44,900)。そのため、内部リンクの集約による評価獲得は考えにくく、1ページ単位の評価獲得による流入獲得が考えられます。
全体の86%の流入をSEOで獲得しており、流入のほとんどがSEOであることがわかります。
・インテリア・サプリのサイト構造
インテリア・サプリのサイト構造は下記のようになっています。EC領域とコンテンツ領域が存在しており、ECサイトですが、コンテンツも同一ドメイン内に保有しています。
・ディレクトリ別オーガニック経由想定流入数
インテリア・サプリがどこで流入を得ているのかを把握するため、ディレクトリ別想定流入数を算出しました。
結果、インデックス数から予測した通り、流入及びヒットキーワードの80%以上を記事コンテンツ領域で獲得していました(/overseas-interior/、/knowledge/)。
また、通常のECページは流入に貢献していないことがわかります。
つまり、インテリア・サプリのSEO戦略もTabroomと同様に、記事コンテンツでキーワード、流入を獲得する手法であると考えられます。
家具・インテリア系EC領域SERPs市場調査まとめ
今回の家具・インテリア系ECサイトのSERPs市場調査から、次の4点がわかりました。
・家具・インテアリア系ECサイト領域のSERPs市場を楽天・Amazonが大きく占有(横断的評価)
・老舗の家具・インテリアECサイトは下り坂(縦断的評価)
・ブルーオーシャンでTabroomが奮闘
・記事コンテンツを利用して新興ECサイトが台頭
ECサイト向けのキーワード領域においても、記事コンテンツが力を発揮するようです。(キナリノ、カウモ、サキドリが想定流入数・ヒットキーワード数で上位に位置していました。)
SERPs市場を把握することで、SEOにおける戦場と敵の理解、取るべきSEO戦略の方向性を示すことが可能です。SEOで対策する前に、まずは市場と競合、そして自らの立ち位置を知ることから始めてはいかがでしょうか。