2014年9月に米国ボストンで世界最大のマーケティングイベント「INBOUND」が開催されています。
インバウンドマーケティングを中心に、世界最新のマーケティングに関するカンファレンスやブース、キーノート等があり、世界中から多くのCMOやマーケティング担当者、マーケティングベンダー等が参加、注目しているイベントです。
そのINBOUNDで、昨日の9月16日にHubspot社が独自のCRM「Hubspot CRM」を発表しました。
今までは、オンラインマーケティングの統合管理プラットフォームとしてHubspotはそのサービスを提供してきましたが、顧客管理システムCRMは搭載しておらず、どうしても一気通貫で顧客の獲得から育成、収益化まで出来ない状態にありました。
又、CRMの最大手であるSalesforceとHubspotの2つのツールを連動させて初めて売上拡大に寄与出来る状態が当たり前だった為、今回Hubspotが独自でCRMを開発&提供するニュースには多くのベンダーやマーケッターは驚いた事でしょう。
今回はHubspotのCRMの機能と、その可能性に付いて書いてみたいと思います。
Hubspot CRM
顧客関係管理システムであるCRMは、今やビジネスツールとして多くの企業に利用されています。特にクラウドによって、個々数年ベンチャーや中小企業も低コストで簡単に導入出来るようになりました。
既に普及率が高まり、CRM自体目新しくは無い今この時代にHubspot社は独自のCRMを開発し、昨日大々的に公表しました。
一体どういう特徴があるのでしょうか?
(特徴)簡単でクイック!
HubspotCRMの紹介ムービーの中で、簡単に直感的に使える事をHubspotCRMの特徴として強調しています。
実際にCRMを導入すると、その機能の複雑さから100%使いこなせている企業は少なく、扱う営業マンは新たに多数の操作方法を学習しなければなりません。
結局の所複雑な操作が必要な為、現場に定着しないケースや、基本的な機能以外は全く機能していないケースが大いにあるのも現状です。
今回Hubspot社が提供開始したCRMは、正にその点にフォーカスを当て、より簡単に直感的に使える事が重視した作りになっています。
▼HubspotCRM紹介ムービー
紹介ムービーに出てくる操作イメージを見るとお分かりの通り、今までのCRMとはインターフェースが大幅に異なります。
CRMというお固いスプレッドシート的なツールというよりかは、FacebookのWallのようなインターフェースで、リアルタイムにコミュニケーションをする事が出来る構造になっている事が分かります。
例えば見込顧客に再提案しようとした場合、多くのCRMでは顧客情報が一覧化されている顧客リストから顧客名をクリックし、顧客の情報一覧からさらに過去やりとりした履歴をメールや電話メモなど連絡方法毎に見ていく必要があります。
これでは過去の情報を再度理解しようとした場合、整理されていない・整理されていても把握するのに時間がかかる為、結局工数がかかりCRMが目指す総売上の最大化を寧ろ狭めることにもなりかねません。
又、HubspotCRMの強みとして売り出しているのが、「使い易さ」です。
通常業務への負荷を極力までに減らした作りとなっており、ほぼ全てのアクションが数クリックで完結される設計となっています。
ユーザー負担を最小限に抑える設計思想は非常に重要であり、HubspotCRMは最も重視していると言えます。
CRMやSAF、グループウェアなど業務システムは導入後のアクションが最も重要であり、その後のアクションでシステムによる効果が大幅に異なってきます。
折角導入しても使いにくく、覚えるのも大変な為、結局定着しなかったという事は良く聞く話しです。既に多くのCRMが世の中にリリースされても、その多くが機能性にフォーカスし、利用するユーザーの負担や使用感にはあまり目を向けてこなかった傾向があるのでは無いかと思います。
Hubspot社がどの様な思想やビジョンで開発したか分かりませんが、紹介ムービーやUIを見る限り、使い易さや新たな学習コストを如何に抑えるか等、導入後まで考慮された作りになっていると思います。
(特徴)オンラインマーケティングと顧客関係管理がワンストップで出来る
Hubspotは、オンラインマーケティングプラットフォームとして最先端のマーケティング機能を提供しており、その良さから世界中の企業が日々利用し、見込顧客の獲得を図っています。
今までは見込顧客の獲得をHubspotで最大化し、獲得後の顧客との関係管理、改善向上は他のCRMを利用して向上を図っていくのが一般的でした。
又Hubspot側もデフォルトで各CRMツールとのデータ連動機能を完備しており、SalesforceやZoho、MSDynamicsなどと簡単に連動する事が出来ました。
しかし、HubspotCRMがリリースされた事により他社のCRMを利用する必要が不要となり、プラットフォームHubspot内で顧客誘導から育成、収益化、顧客維持まで一気通貫で行えるようになりました。
競合他社の動き
今までマーケティングプラットフォームとしてサービス提供してきたHubspotが、個々に来てCRMまで領域を広げてきましたが、CRMを主軸としてきた競合他社の動きはどうなのでしょうか。
Salesforce.com
クラウドベースの営業支援ツールの代表格であるセールスフォースは主にCRMやSAF、PaaS等を提供しています。
そして現在ではOne to OneデジタルマーケティングプラットフォームであるMarketing Cloudをリリースし、マーケティングプラットプラットフォーム機能までその機能領域を広げています。
機能はHubspotと非常に類似しており、ランディングページ作成機能からレコメンデーションエンジン、購入ガイダンス機能、Webアナリティクス(アクセス解析)、ソーシャルシグナル計測、ソーシャルメディア投稿、広告管理などオンラインマーケティングの統合プラットフォーム機能を備えています。
Oracle
RDBMSの最大手オラクル社も同様にマーケティングプラットフォームを提供し始めています。
オラクルのマーケティング オートメーション
元々はデータベースソフトウェアの開発、販売を主軸とし、自社サーバーハウジング型のERPやSAF、CRM等の製品が主力ですが、現在ではマーケティングプラットフォームの必要性が高まり、Oracle Marketing Platformの提供を開始し始めた流れのように見えます。
CRMを主軸としてきた他社もHubspotマーケティングプラットフォームと同様のサービスを需要に合わせて開発し、提供し始めています。
まとめ
マーケティング、営業、顧客サポート等は社内の部署でも、ソフトウェア(ベンダー)上でも分かれていました。
それぞれ対象となる「人(顧客ユーザー)」が異なる為、部署やソフトウェアを分けても特に大きな問題が発生しない背景がありました。
しかし、インターネットとデバイスの進化により顧客の行動範囲やビヘイビアが個々数年で大きく変化し、「One to Oneマーケティング」に代表される様に顧客1人1人に合わせてサービス提供をしなければならないのが現状です。
顧客が検索エンジン経由で初めてWebサイトに訪れた時の情報から購入後のカスタマーサポートまで常に情報を同じDBで共有し、「お客様の事を常に知っている」状態まで企業は求められているのかもしれません。
そういった中で、Hubspot社がマーケティングプラットフォームだけのソフトウェアサービス提供から脱却し、マーケティング×CRMとサービス領域を広げるのは自然な流れなのかもしれません。