最近、キュレーションメディアのiemoとMERYが50億円で買収されたニュースが話題となりましたが、実際にどれくらいの集客力があるのか気になる所です。
ページ(記事)の作成が比較的安価で簡単に作成できる事と、集客に大量の広告費を必要としない事があり、2013年ころから各社が挙ってキュレーションメディアを立ち上げ、旅行関係からファッション、グルメなど様々なテーマのキュレーションメディアが多数存在しています。
今回はキュレーションメディアの実情を知るべく、日本国内のキュレーションメディアの集客力と記事投稿数を調べてみました。
キュレーションメディア
MERY
つい先日DeNAによる買収が発表されたMERYは、女性向けのまとめキュレーションサイト。
その知名度は高く、様々なWebサイトやソーシャルメディア上で共有されている所を見かけるほどです。
2013年4月公開と最近出来たWebサイトながら、現在の月間ユーザーは1200万人と国内でも有数の大規模サイトに成長し、ビジネスに於けるその存在感を高めています。
MERYの流入推移
上図はSimilarWeb Proで調べた流入推移ですが、オレンジ色の棒グラフが急激に伸びている事が分かります。この棒グラフは検索エンジン経由の流入であり、2014年の4月から急増しています。
トラフィック元のグラフを見ても、その集客の約7割を検索エンジンから獲得している事が分かります。
MERYの記事投稿数
上図は独自で調査したMERYの日別投稿数です。
登録すれば誰でも投稿できる為、平均200記事程が安定的に投稿されており、安定した更新性が検索エンジンやソーシャルメディアから評価を得て、結果的に大量の流入数を獲得している要素だと思われます。
4meee
2014年の8月に5000万円を調達した4meeeは女性向けのキュレーションサイトです。
MERYとカテゴリは似ていますが、4meeeはよりキュレーターに重きをおいており、オフィシャルモデルや公式キュレーターをブランド化する戦略をとっている様です。
ドメインの取得は2014年5月3日とまだ非常に新しいメディアながら、3200以上の記事数を抱えています。
4meeeの流入推移
SimilarWebによると、9月の値では月間11万以上のトラフィックを獲得しています。
検索エンジンからの集客が大半のMERYとは異なり、ソーシャルメディアからのトラフィックが最も多いのが4meeeのトラフィック元の特長です。
ソーシャルメディアからのトラフィックの80%以上がFacebookからの流入です。
4meeeの公式Facebookページ(いいね数:2300以上)からの誘導とは別に、4meeeの強みでもあるオフィシャルモデルによるFacebook投稿も流入数の増加に大きく寄与していると考えられます。
例えば、安岡 あゆみさんのFacebookページは、いいね数が7千以上とインフルエンサーとして力を保有しており、4meeeに関する各投稿には60~200以上ものいいねを獲得しています。いいね数が平均100以上獲得しており、リーチ数はその数倍以上と想定できます。
4meeeの記事投稿数
平均して20記事を毎日公開しています。月間では600記事ですので、年間では7,000記事以上が生成されるペースです。
4meeeでは誰でも記事を作り、投稿する事が出来ますが、現時点では公開前に必ず運営側のチェックが入る為、作成された全ての記事が瞬時に公開される訳ではありません。
MERYの様に、大量のコンテンツ量を持って集客力や知名度を上げる戦略ではなく、1つ1つのコンテンツの品質を高め、4meeeというサイトブランドに重きを置いたWebコンテンツ戦略を採っているように見受けられます。
今後、オフィシャルモデルによるサイトブランドや知名度の向上により、更に参加キュレーターが増え、記事公開数も同じように増加していくと考えられます。
LAUGHY
LAUGHYは、芸能や映画、ドラマなどエンタメに特化したWebマガジンです。
ここ最近、芸能系のキーワードで検索した際、よく見かけるWebサイトでもあります。ドメイン取得日も2014年4月24日とまだ新しいWebメディアの様です。
LAUGHYの流入推移
SimilarWebによると、7月移行から急激に検索エンジン経由のトラフィックを獲得しています。9月値の推定月間トラフィック数は57万以上と大規模サイト並の流入を得ています。
現段階では、7割近くが検索エンジン経由のトラフィックで占められています。
LAUGHYの記事投稿数
まだ新しいWebメディアながら記事数は7千近く存在します。
クローズド型のWebメディアとなっており、公式キュレーターのみ記事を作成し、投稿できます。
曜日によって変動がありますが、一般的な勤務と同じく月曜日から金曜日に投稿数が増えており、休日になると投稿数が下がる傾向があります。
Naverまとめ
今や超大手Webメディアまでに成ったNaverまとめは、日本国内に於けるキュレーションサイトの流行キッカケを作ったメディアでもあります。
検索エンジンで様々なキーワードで検索しても、必ずNaverまとめが表示されるほど多種多様のトピックに関するコンテンツが膨大に存在するキュレーションサイトです。
Naverまとめの流入推移
SimilarWebによると、月間約4000万近い訪問数を獲得しています。
これは日本有数の超大手サイトニコニコ動画の7800万訪問数や、Yahoo!知恵袋の6900万に近づく勢いです。
ほぼ全ての集客を検索エンジンに頼っており、その割合は全体の8割以上にもなります。この割合は現時点でGoogleから好評化を得ている事が言えるのと同時に、評価が変わればこのトラフィックも大きく変動する事を意味します。
Naverまとめの記事投稿数
抱える膨大なユーザーにより、毎日数万近い記事が新たに投稿され、日々新しい話題に関しまとめ記事が作成されています。
9月に放映が開始されたNHK朝ドラ「マッサン」に関しても、公開されて間もないにもかかわらず既に多数のまとめ記事が上がっており、(主人公の妻)エリーの髪型に関するまとめ記事でも2件以上がすでに公開済みとなる程の記事化の早さがあります。
立ち上げのハードル
今回の調査から、約6ヶ月間で20万~30万もの訪問数を確保できるポテンシャルを持っている様です。
記事の制作数や品質、選択するテーマによって異なりますが、6ヶ月後に35万訪問数を獲得できるメディアを作成したと仮定し、かかる費用を算出してみましょう。
先ずサイト製作費として300万円を計上します。
実際にはそれ以上に掛かる場合もありますが、クローズドのキュレーションメディアとし、Wordpressをカスタマイズした形で立ち上げます。専用の投稿画面も作成せず、人力で記事を形成し、入稿する事で制作費用を抑えます。
次にランニングコストですが、記事や数値の管理として専属のディレクターを1名配置します。精査する記事数やメディア規模の拡大に合わせて人員を増やしていきますが、先ずは1名を配置します。
又、記事の制作は契約したライターに依頼します。サイトのテーマや記事内容の難易度によって単価も異なりますが、今回は4000円/記事とします。
以上の設定から、6ヶ月間に掛かるミニマムの費用は約1600万円となります。
次に想定訪問数の算出です。これはサイトの収益力を表す数字です。
各キュレーションメディアの成長過程から、立ち上げ半年後に35万の訪問数を得る事を想定し、月間の想定訪問数を算出してみました。35万という数字はあくまでも各メディアのSimilarWeb値から大体の平均を取った為、実質その倍以上は獲得出来ると考えられます。
6ヶ月間で76万の訪問数で、かかったコストを割ると6ヶ月間の累積集客単価(CPC)が算出できます。
約1訪問あたり21円で獲得できる事が分かりました。
女性向けのメディアを立ち上げ、ファッションや芸能、EC系キーワードをリスティング広告で集客しようとした場合、同じくらいのCPCで獲得出来るのではないでしょうか。
当然、サイトの累積コンテンツ数が増える事により集客数は右肩上がりに増え、変動費含めて月の費用はさほど変化しない為(サイト運営人員やブーストは今回考えない)、集客単価(CPC)は下落を辿り、収益点(損益分岐点)を早期に迎えると考えられます。
まとめ
今回は大雑把な調査でしたが、やはりキュレーションメディアが乱立する理由も、その立ち上げの敷居の低さにあるのではないかと言う事が分かってきました。
当然、著作権問題などキュレーションメディアが抱える問題点は多数ありますが、安価に潜在顧客層を集客できるWebメディアの手法としては非常に魅力的でもあります。
一定数の記事品質と投稿数を担保できる環境を整え、ある程度のSEOやソーシャルメディアマーケティングを実施する事により多くのユーザーを集客出来るのかもしれません。