今回は日本のコンテンツマーケティングの事例を紹介したいと思います。
旅行ナビゲーションサイト「たびねす」をご存知でしょうか?
ツアー・航空券比較サイト「Travel.jp」やホテル・宿の口コミサイト「Hotel.jp」を運営するVenture Republic社の観光ガイドサイトです。
私も小旅行を計画していた時に検索でたまたま見つけたサイトでしたが、サイトコンテンツが非常に役立ち、コンテンツマーケティングサイトとしても非常に優秀であった為、今回ブログで取り上げさせていただきました。
対象サイト:国内・海外の旅行・観光ガイド[たびねす] by Travel.jp
「たびねす」とは
たびねすとは、旅行比較サイトTravel.jpの運営会社Venture Republic社が運営するユーザー投稿型旅行レビュー・レポートサイトで、ユーザーが実際に行った旅行先のレポートを写真付きで投稿、公開するWebサイトです。
Travel.jpや競合サイトの楽天トラベルとは異なり、旅行プランの比較や宿個別の紹介ページは一切なく、ユーザーの体験記やレビューコンテンツのみが掲載されています。
たびねすの記事ページ横、下部には本家サイトTravel.jpへのリンクが設置されており、たびねすで集客した見込顧客(潜在顧客)をコンバージョン地点を持つ本計サイトへ送客し、Venture Republic社が抱える事が出来る顧客ボリュームを拡大しています。
たびねすの集客力
毎度おなじみ、流入数を調べる事が出来るツールSimilarWebで調べてみましょう。
↓過去6ヶ月の流入推移
月間28万もの訪問者数を獲得し、現在も右肩上がりで伸びています。
↓流入元の比率
半数以上が検索エンジン経由です。大半のトラフィックを検索エンジンに頼っているにもかかわらず安定して増加している背景には、各コンテンツが継続して評価されている証でしょう。
Paid Searchが「0」と言うことは基本的にリスティング広告は掲載しておらず、すべて自然検索で流入してきている事になります。
たびねすの反響
流入に始まり、ソーシャルやブログ、ホームページでの共有、拡散はどうでしょうか。
インバウンドリンク
共有方法として昔からあるのがインバウンドリンクです。
ホームページやブログでの紹介、ソーシャルでの投稿によるリンクなどWebサイトを共有すれば自ずと増えるのがインバウンドリンク数です。
今回はAhrefs.comで調べてみました。
↓インバウンドリンク増減推移(domain/*)
黄色い棒グラフがドメイン数(リンクを渡したサイト単位)、水色の棒グラフがインバウンドリンク数(全リンクの総数)になります。
たびねすは本家サイトtravel.jp等からもリンクを受けている為、大規模サイト付け外しによるインバウンドリンク数は大幅に増減し、反響は正しく測定できませんので、インバウンドリンクを渡しているサイト数(ドメイン数)で見てみましょう。
データ取得が開始されたのが2014年の5月からとすると、緩やかに右肩上がりです。大体3ヶ月間で200サイトの増加でしょうか。ごく自然的な伸びであり、正しい評価を受けれるインバウンドリンクを獲得出来ている様に見受ける事が出来ます。
ソーシャルシグナル
はてなブックマーク
日本最大級のブックマーク共有サイトはてなブックマークでどのくらい共有状況をみてみましょう。
各記事に多数のブックマークがついています。
各サイトの合計ブックマーク数を並べてみました。
内容、対象ユーザー像が異なる為、直接の比較は出来ませんが、たびねすと旅行比較サイトでは圧倒的な差があります。
又、ユーザー像が類似するハウツー系サイトと比較した場合、大きな差がありますが、運営期間が2年と短くテーマも旅行に絞っているという状況では多数のブックマーク数を獲得できているサイトに入ると思います。
ソーシャルシグナル
ハウツー系コンテンツ掲載サイトの為、ソーシャルでも共有される確率が非常に高い様です。
直接的な比較にはなりませんが、イメージを掴むためにはてなブックマーク数上位10URLのソーシャルシグナルをたびねすと本家サイトの競合になる楽天トラベルの2サイト分を測定してみました。
たびねすは各記事のはてぶ数も多いことながら、ツイッターでの発言数やFacebookでの「いいね」や「シェア」も多い傾向にあります。
楽天トラベルやTravel.jpは比較サイトであり、既に旅行を申し込む意志が強いユーザーが訪問するサイトです。ユーザーの旅行プランを検討する為のコンテンツを提供しており、どちらかと言えば「読む」コンテンツではなく、「比較する」コンテンツが中心です。
この為、ユーザー個々で情報を閲覧するのが主体であり、共有意欲は殆ど湧かない背景があるのではないかと思われます。
たびねすは各記事は「紹介されている場所、イベントに行きたい気持ち」を誘発する内容となっており、自ずと共感を生むのでしょう。この為、はてぶ数やシェア数が多いのも説明が付きます。
まさに潜在顧客層をZMOT段階で集客する事に成功していると言えるでしょう。
たびねすのコンテンツの作り方
たびねすの記事はナビゲータと呼ばれる旅ガイドを寄稿するライターさんによって作成されています。
いかにして、これほどユーザーの反応が良い記事を継続的に公開出来ているのでしょうか。
インセンティブでライターさんの投稿意欲を促進
Naverまとめで流行ったインセンティブの仕組みを上手く取り入れられている様です。
ガイド募集ページを見ると詳しく募集要項が記載あります。
まとめると下記内容で募集しているようです。
報酬はアクセス数
投稿した記事が多くのアクセス数を獲得すればするほど報酬金額は増える仕組みです。
ユーザーにより支持されるコンテンツを書けば、その対価がお金としてライターさんに帰ってくる(可能性)仕組みになので、良質なコンテンツが集まりやすい体制が構築出来ている事になります。
又、募集ページには「記事が掲載されると継続的に報酬が発生」とあります。アクセス数による成果報酬とは別に記事の成果物の数でも対価が入るような仕組みを作っているようです。
投稿内容は写真と文章のみ
読者に「ここに行きたい」と思わせる文章と写真を投稿するのみで完了という点もライターさんにとっては非常に手軽に出来て、記事を安定的に集めれている理由になっていると思われます。
上記はたびねすの記事ページ構造を図化したものです。
各ページを実際に見てみましたが、ほぼ全て同じ形式で、1セクションを「見出し文→写真(横800px縦500~600前後px)→説明文」と形式化する事で文章随筆時や投稿時の工数削減にも大幅に寄与しているのでは無いかと思います。
募集形態は契約ライターと副業ライターの2つ
本格的に旅行ライターとして業務委託契約をTravel.jpと結び、記事を随筆するライターさんと、空いた時間に記事を投稿するライターさんの2つの募集形態があります。
業務委託契約ライターの場合は採用時に面接を行い、報酬は固定+従量としており、ほぼ本業として記事随筆を希望するライターさん向けです。業務委託の為、継続的な投稿や取材記事などが求められるようです。
それに対し、一般なビーターと呼ばれるライターさんの場合、面接は不要でネットから申込、投稿、報酬受け取りが出来るようです。報酬は現金ではなくAmazonギフト券のみ。
どちらも在宅ライターさんにお願いする形は同じですが、時間の使い方が異なるライターさんによって投稿できる数や求める報酬が異なる為、たびねすの様に異なる募集条件を用意するのはライターさんの確保という点に於いて重要でしょう。
まとめ
「たびねす」の戦略、ココは真似したい!
サイトコンセプトが非常に明確
サイトテーマを旅ガイドに限定する事で、サイト自体の専門性が高まり、自然と提供コンテンツの内容も濃くなる。
記事ページの構成が定型化されている
「見出し文→写真→説明文」という定型化された記事構成なので、記事制作工数を削減できる運用体制が築けている。
サイトコンセプトだけに終わらず、継続的に運用する為の運用の工夫が見られる。
ライターを上手く集めている
インセンティブ制を導入して上手くライターを集めている。
又、ライターの雇用形態を2つ用意する事で、ネット上にいるライターほぼ全てに満足のいく対価を出せる体制を築いている。
最後に
比較系サイトは検索エンジン最適化やリスティング広告など非常に激戦区なワードで日々競合他社と戦っています。
しかし、ZMOTなどによりユーザーの検索ワード幅が広がり、いままでコンバージョンには寄与しないと考えられていたハウツー系記事などに潜在・見込顧客層が流れ込んでいます。
財力の差で広告競争(出稿量)等にどうしても負けてしまう企業サイトでもコンテンツマーケティングで十分に見込顧客を獲得できる様にマーケットが変わったのでは無いかと思います。
今回は旅行比較サイト大手のTravel.jpさんの事例を紹介しましたが、この波に乗ろうと大手ECサイトや比較サイトなど多数の事業者がオウンドメディアの構築に入るのではないでしょうか。
<今回のブログで参考にさせて頂いたWebサイト>
・格安旅行・ツアーの価格比較・予約情報サイト – トラベル・ジェーピー
・ホテル・宿選びのクチコミサイト | ホテル・ジェーピー
・国内・海外の旅行・観光ガイド[たびねす] by Travel.jp