BtoB企業のコンテンツマーケティングにおいて、事例として取り上げられることが多いのが、サイボウズ株式会社が運営する「サイボウズ式」です。
グループウェアの国内シェアNo1のサイボウズですが、「サイボウズ式」は単なる商品紹介のWebメディアではありません。「世界中のチームワークを向上する」をミッションとし、幅広いトピックでコンテンツを作成しています。
サイボウズ式とは
サイボウズ式がオープンしたのは2012年。2年後には月間20万PV(14年6月)のサイトに成長しています。コツコツと更新を続けており、14年9月時点で275記事に達しています。
参考:オウンドメディアは一体何の役に立つのか?「サイボウズ式」に学ぶ成熟市場におけるPR手法
なぜサイボウズ式をはじめたのか
グループウェア市場No1のサイボウズがなぜコンテンツマーケティングを始めたのか。その理由は市場の変化にありました。
グループウェア市場は成熟しています。積極的に情報収集するアーリーアダプター層には広く普及しており、今後はITに関心のないマジョリティ層のお客様に認知させることが普及の鍵となります。よって製品の「機能」を説明するのではなく、それによってどんな問題が解決されるかという「価値」に焦点を当てる必要がある。そこで、チームワークを高めるための実例やコラム、新しい働き方などをまとめて提案型コンテンツを作成しています。
サイボウズ式のターゲットユーザーは情報システム担当者ではなく、社会人一般。会員登録を求めるのではなく、多くの目に触れるようにしたいという思いがある。よってPVをKPIの1つにしています。
参考:キュレーションメディア時代のコンテンツマーケティングとは
サイボウズ式の集客戦略
それでは、サイボウズ式はどのような集客戦略をとっているのでしょうか。
SimilarWebによると、ソーシャルからのアクセスが45%を占めています。自然検索から地道にアクセスを稼ぐのではなく、ソーシャルで広く拡散させてアクセスを集める。ハフィントンポストやBLOGOSなどのネット媒体へのコンテンツ提供にも積極的です。
サイボウズ式はコンテンツ1つ1つの質を高めるために、様々な工夫をしています。
ソーシャルメディアでの拡散等もあり、急激に集客数を伸ばしています。
【1】OGP設定の最適化
OGPを設定することで、FacebookやGoogle+などのSNSでシェアされた時に、記事のtitle・画像・説明文を正しく伝えることができます。サイボウズ式がメインターゲットとするビジネスマンはFacebookとの親和性が高い。アクセスを集めるためには、クリック率を向上させるOGPを設定することが重要です。
↑headに記述されているOGP設定
サイボウズ式では、titleとog:titleを別の記述にしています。GoogeやYahooの検索結果ではサイト名まで表示させる必要がありますが、SNSではその必要はありません。そのため、サイボウズ式のog:titleにはサイト名が含まれておりません。
また、普通のサイトではog:descriptionもサイト内から流用することが多いですが、サイボウズ式は記事ひとつひとつに個別のog:descriptionを設定して最適化しています。さらに、og:imageを使用しfacebookで表示させる画像を指定しています。
上記表は記事「プログラミング言語は「黙って写経」」のOGP設定
【2】外部ブロガーの寄稿
外部のブロガーからの寄稿が多くのトラフィックを稼いでいます。以下は、サイボウズ式の中でブクマ数が多い記事の上位15本を列挙しました。半分近くが「ブロガーズ・コラム」であり、外部ブロガーの寄稿がソーシャルメディアでの拡散の要であったことがわかります。
↑サイボウズ式ではてブを多く獲得している記事
たとえば、最も多いはてブ数を獲得した記事“「自分でやったほうが早い」でチームは滅ぶ”の執筆者、日野瑛太郎さんは、脱社畜ブログを運営しています。東洋経済オンラインやマイナビニュースに寄稿し、本の出版経験もあるベテランブロガーです。
図:サイボウズ式の寄稿ブロガー、日野瑛太郎氏のページ
コンテンツマーケティングでは、社内・社外のリソースをうまく活用することが重要です。ライターを育成するだけではなく、経験豊富な外部ライターの手を借り、ソーシャルで拡散させる記事を作成することも必要です。
【3】表現の工夫
サイボウズ式では読み手に伝わりやすい表現に工夫を重ねています。たとえば対話型の記事。右がサイボウズ式の対話記事ですが、画像と吹き出しを織り交ぜた会話調で読みやすくしています。読みやすい記事はユーザーの滞在時間も増やし、再訪問につなげやすくします。
会話調の記事はユーザーの精読率・滞在時間を高める表現技法として、様々なサイトで取り入れられています。
【4】独自の記事イラスト
サイボウズ式では、記事のメインイラストを独自で作成しています。フリーの写真や画像を利用することは少ない。特に、拡散が期待できるブロガーズ・コラムでは、マツナガエイコ氏のイラストを用意。内容が端的に表現され、かつ親しみやすいイラストは、クリック率と精読率を向上させることが期待できます。
以上のように、多くのターゲットユーザーにメッセージ届けるため、サイボウズ式は様々な工夫を凝らしてコンテンツを作成しています。この記事で紹介した例は、あくまでサイボウズ式のものであり、企業の成長ステージや市場の成熟度によってコンテンツマーケティングの戦略は変わってきます。すべてを取り入れることはできないものの、参考になるポイントを活かして、自社の集客戦略に活用してください。