『ソーシャルメディアマーケティング』という言葉が出てきてから数年が経ちましたが、まだWebマーケティングの主流では無いように感じます。
しかし、ここ最近はスマートフォンの爆発的な普及とソーシャルメディアの利用者数が増えた事により、アクセスの流れが大きく変化しています。
新しい集客手法や経路を活用し、Webメディアとしての価値を高めている新興勢も2013年頃から出始めてきました。
今回は、米国のニュースメディアを取り上げ、彼らのソーシャルメディアの投稿方法などを調査してみました。
新興ニュースメディアのソーシャルメディア活用
米国にはニューヨーク・タイムズやCNNなど世界的な新聞社やニュースメディアが複数存在し、日々Web上でもニュースや情報を配信しています。
しかし、ここ最近全く新しいニュースメディアが対抗しはじめ、ユーザーのニュースの受け取り方も大きく変化しています。
新興メディアの多くは若い世代が毎日使うスマートフォンに注目し、今までとは異なる形で配信したり、取材するのではなく情報をキュレートしまとめる形で配信するなど、既存の配信方法とは異なる形でニュースを伝えており、結果的に多く若いユーザー層を獲得しています。
Mic.com
上図はニュースメディア.Micです。
ブログ形式でニュースを伝え、アクセスの大半をソーシャルメディア経由から獲得しています。
2011年の設立と非常に新しいメディアにも関わらず、欧米を中心に読者を獲得し続けています。
↑他のニュースメディアと比較しても、ソーシャルメディア流入比率が異常に高い事が分かる
データ出典:SimilarWeb
ソーシャルメディア流入の90%以上がFacebook経由。意外にもTwitter経由は全体の3%しかありません。
Micの公式Facebookアカウントには63万人以上のユーザーからいいねを獲得しており、日々数十万人ものユーザーに記事ページがリーチできる環境にあると想定されます。
Mic公式Twitterアカウントのフォロワーが7万人なので、Facebookはその10倍近い配信力がある事になります。
公式Facebookアカウント内の投稿を見ると、その多くが下記ルールで投稿されていました。
・説明文は基本1行で、短い
・リンク先URLを説明文に入れない
・画像がFacebook投稿専用である(サイズも含めて)
・リンク先のtitle文から「 – Vox」を削除している
出来る限り文章を短く、ほぼ画像だけでユーザーに内容を訴求し、クリックへと誘導している様に投稿戦略を組んでいるように見受けられます。
Vox.com
Vox.comは、2014年の4月に立ち上がった非常に新しいニュースメディアです。こちらも最大の集客口がソーシャルメディアである事が分かります。
元々はブログサービスとしてシックスアパートがドメインを保有していましたが、現在はVox media inc社がドメインの保有し、新興ニュースメディアを運営しています。
参考:Voxサービス終了のお知らせ
先ほどのMicとは異なり、Vox.comのソーシャルメディア流入はFacebookとTwitterの2つのメディアで占めているようです。
公式Facebookアカウントには21万のいいねが付いています。
VoxもFacebookへの投稿は、説明文は短く、全ての投稿には画像を付与し、リンク先タイトル文は出来る限り最適化しています。
やはり長い説明文をユーザーに読ませ、理解した上で理性的にリンクをクリックさせるのでは無く、画像と一文を目にしたユーザーが瞬発的(本能)な要求をもとにクリックするのを狙っているのでしょう。
URL投稿する際、アイキャッチとなる画像をページのOPG指定している画像とは異なる物をアップロードしています。
Facebookページを重要メディアとして運用している企業では当たり前の事ですが、記事数が膨大にあるニュースメディアに於いて、記事毎にFacebook投稿用の画像を用意するにはコストも手間もかかります。
しかし、Facebook向けの専用画像を用意する事がクリック促進に大きく影響してくる事を認識し、コスト以上の効果が得られる為、各投稿の専用アイキャッチ画像を用意しているのだと思われます。
アップロードする画像もリンク先の記事内容に応じて3つのタイプで作成しているようです。
●情報性がある画像
画像そのものが読み物としてメッセージ性を持っており、ユーザーはその内容を読んだ上でリンクをクリックするか否かを判断します。
リンク先記事の内容がやや専門的な場合にはこのタイプを用いるようです。
●人物の顔が中心の画像
人の顔は本能的に人間の目線を集めやすく、視認率を上げる方法としては昔から言われている事だと思います。
記事の内容が特定の人物や団体、企業など人が関わる場合、そのメインパーソンの顔をキャッチ画像として用いているようです。
●グラフィックデータ
誰しもが関係する税金の問題であったり、政府内閣の支持率などデータを元に執筆している記事の場合、そのデータをインフォグラフィック化し、Facebookキャッチ画像としてもアップしています。これはメッセージ性も高く、画像の下に表示されるタイトル文と共に認識される可能性が極めて高い画像タイプでは無いかと考えられます。
Twitter投稿もFacebookと同じく、出来る限り画像を使ってユーザーの視線を集め、クリックを促進している様です。
リンクとして投稿されているURLには、Google Analyticsのパラメータが細かく設定されている所を見るとページ単位、経路単位で詳細に効果分析し、改善しているのでは無いかと考えられます。
VoxはFacebookだけに留まらず、様々なソーシャルメディアアカウントを駆使し、多方面からユーザーを集客しています。
Youtubeアカウントも充実しており、テキスト型の記事と共に動画形式でのニュース配信にも力を入れています。
公式FacebookページのTOPにはYoutubeアカウントへのリンクも表示。
ソーシャルメディア投稿のベストプラクティス
様々なニュースサイトの投稿方法から、いくつか共通する投稿方法がありました。
何度も仮説→実行→分析→改善を繰り返した結果、この様な投稿になったと思われますので、ある程度正攻法として考えても良いでしょう。
先ず、大前提としてソーシャルメディア上では、凄まじいスピードでコンテンツが日々「消費」されており、記事を公開しただけではその存在すらユーザーに気づいてもらえない事が多々あります。
例えばFacebookアプリでウォールを閲覧するユーザーの多くは、無意識に速いスピードで縦にスクロールし、大量に流れる情報から自分の興味がある情報を選別しています。
ユーザーが自発的に情報を調べに来る検索エンジンは異なり、Facebookを見に来るユーザーの多くは特に明確な意図や意思を持っている訳ではありません。
このユーザーの情報収集意欲が低い中で、0.1秒以下の短い時間内に如何にユーザーの注意関心を引きつけるかは、ソーシャルメディア投稿に於いて極めて重要な要素でしょう。
ソーシャルメディアの集客で成功を収めているWebメディアの投稿方法を見ると、下記の共通点があります。
1)出来る限り文字の説明文は短くする
基本的には1行以内(数十文字)に収めており、URLなども含めていません。
出来る限り不要な文章は含めず、訴求ワードのみを入れている様です。
2)画像の最適化
必ず横幅が最大で表示されるよう、適切なサイズの画像が投稿されている。
又、ユーザーの視線を最も集める要素である為、人々の興味関心を惹きつけやすい「人の顔」や「話題性のある物・キャラ」「気になるデータ」などを選択しています。
3)タイトル文を最適化
通常URLを投稿すると、キャッチ画像の下に表示されるタイトル文は、リンク先ページのtitleタグから文がそのまま引用されます。
しかし、その文にはサイト名など不要な文字が入っていおり、特にユーザー視線を集める訳でも無いので、削除します。
SEOを考慮したタイトル文をソーシャルにもそのまま投稿するのではなく、ソーシャル上はユーザー視線を集める事だけを考慮したタイトル文に書き換え、最適化します。
Twitterへの投稿もFacebookと同じく、出来る限り短く訴求がある文章と画像のセットで投稿します。
本来ツイッターは140文字まで文章は投稿できますが、各ニュースメディアは数十文字以内に留めており、出来る限りキーワードのみで訴求する事にフォーカスしているようです。
又、短縮URLを使うのも投稿ポイントの一つでしょう。URLをそのまま投稿すると、途中で「…」に書き換えられますが、ユーザーの視線・認識を邪魔する要素にもなりかねません。自動短縮処理がされず、ユーザーの視線を邪魔しない短縮URLを使って投稿します。
まとめ
今回は新興ニュースメディアのソーシャルメディア投稿を取り上げました。
ユーザーの意識や層が異なるECサイト等にそのまま使える手法ではありませんが、各メディアがPDCAを繰り返し編み出してきた手法だと思われますので、一つ参考に自社の投稿手法を編み出す際の参考として考えてみると良いでしょう。
●Mic.comはFacebookからのアクセスが8割
●Facebook投稿の際は、短い説明文と画像の2セットで投稿する
●説明文は出来る限り短く、キャッチーで
●Voxは2014年の4月設立の新興ニュースメディア
●Voxも5割近くがソーシャル経由でアクセスを集めている
●Facebook投稿とSEOは完全に分ける
└タイトル文はそのまま使わない
└アイキャッチ画像はFB投稿専用の物を作る
●FBへのリンク投稿の画像はウォール幅一杯に表示されるサイズで
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